《聖女パーティー》エルマ視点16:誰のが貧相ですって!?
地の女神――テラさまから馬鹿イグザ一行が風の女神のもとへと向かったことを聞かされたあたしたちは、オルグレンを離れ、東にあるという砂漠地帯へと向かっていた。
もちろん馬鹿イグザのように空を飛べたりはしないので、ポルコともども徒歩での移動になるのだが、大体旅人たちが率先して馬車に乗せてくれたりする。
まあ当然でしょうね。
だってあたしはこんなにも可憐で誰もが振り向かざるを得ない女神のような聖女さまなのだから。
でもだからこそあたしは知っているの。
世の男たちはこの清純なあたしを汚したくて堪らないということを。
そうよね、男ってそういうものだもの。
どうせあんたもそうなんでしょ? ポルコ。
知ってるのよ?
あんたが常々あたしのことをいやらしい目で見てるってことをね。
「――あ、聖女さまもおもち食べます?」
「……」
いや、ちょっとはいやらしい目で見なさいよ!?
御者の人が外で馬を引いてはいるけれど、こんな狭い空間に絶世の美女と二人きりなのよ!?
なのになんでおもちの方にばっか目がいってるわけ!?
あたしのナイスバディを見なさいよ、バディを!?
てか、いつの間にそんなもの買ったのよ!?
いや、さっきの町で買ったんでしょうけど、まずは聖女たるあたしにお伺いを立てるところから始めるのが筋ってもんじゃないの!?
あたし聖女よ!?
舐めてんの!?
「で、では一口だけ……」
「はい、美味しいですよ~」
いや、まあ食べるんだけどね!
お腹減ってるし!
豚から熱々のおもちを受けとったあたしは、それをぱくりと頬張る。
うん、甘くて美味しいじゃない。
もぐもぐとおもちを咀嚼しながら、あたしは豚の様子をちらりと窺う。
「はふぅ~」
それにしても美味しそうに食べるわね、この豚。
まあだからこそあのたぷたぷなお腹になってるわけだけど。
てか、マジでこの豚あたしのこと女として見てないんじゃないかしら?
むしろ男色の気があるんじゃないの?
だってこんなにも可憐なあたしが四六時中側にいるのよ?
普通は情欲を抑えきれなくなるもんなんじゃないの?
いや、まああたしは絶対無理だからビンタ一発でさよならって感じなんだけど。
でもそれにしたってまったくそういうのが見えないとイライラするっていうか……って、これだとまるであたしがこの豚に気があるみたいじゃない!?
そうじゃないのよ!?
あたしの美しさにときめかない男がいることにイライラするの!
だからそう――ポルコは〝男好き〟なのよ!
それ以外にはありえないわ!
はい、決定!
異論は認めませーん! と残りのおもちをあたしが一気に呑み込んでいた時のことだ。
「――はうあっ!?」
「?」
突如ポルコが何かに驚いたように大口で固まったではないか。
どうしたのかとあたしがポルコの視線を追ってみると、そこにはこちらに向けて馬で早駆けしてくる女性の姿があったのだが……胸元がとっても豊かだった。
それはもう牛なんじゃというくらいに。
ぼんぼんとお跳ねになられて。
「い、いやはや、まったくけしからんですな!」
「……」
ちょっと待ってマジで一回しばくわよこの豚。
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