《聖女パーティー》エルマ視点9:ラフラって死んでるじゃない!?
港町ファミーラで槍の聖女を倒したという炎使いの話を聞いたあたしは、それが件のヒノカミさまの御使いだと確信していた。
何せ、御使いが向かったというレオリニアで行われたのが、その武神祭とかいう闘技大会だったからだ。
マグリドの巫女――カヤの話だと、御使いはレオリニアへさらなる研鑽を積むべく向かったという。
当然、武術都市と名高いらしいレオリニアに向かった理由など一つしかない。
――そう、武神祭で優勝するためである。
そこでたまたま槍の聖女とぶつかったのだろう。
聖女を倒すほどの技量を持つとは、さすがは神の御使いである。
確か名前は……〝ラフラ〟、と言ったか。
旅人たちの話はどうにも的を射ない感じで、やれ槍の聖女が凄い美人だっただの、胸が跳ねて最高だっただのとくだらないことばかりだったが、相手の方に〝ラフラ〟という名前があったことだけは聞き出すことが出来た。
っていうか、あの男絶対あたしの胸と見比べて言ってたわよね!?
なんなの!?
あたしの胸が貧相だって言いたいわけ!?
これはまだ成長期なのよ!?
まったく、そのくらい察しなさいよね!?
あたしがあの時のことを思い出し、ぷんすこと苛立ちを覚えていた時のことだ。
「――お、見えましたぞ。あれが武術都市レオリニアです」
豚男……もといポルコが街道の先を指差しながらそう言った。
ふっふっふっ、待ってなさい、ヒノカミさまの御使い――ラフラ!
この聖女エルマさまが直々にあんたをスカウトしに来てやったわ!
◇
「え、ラフラなら一年前に死にましたぞ?」
……はっ?
はああああああああああああああああああああああああああっっ!?
え、ちょ、意味分かんないんですけどーっ!?
比喩抜きで両目が飛び出しそうになるあたしだったが、そこは聖女の意地――努めて冷静に問いかける。
「で、ですが今年の武神祭ではラフラなるお方が優勝されたと……」
「ああ、そりゃたぶん〝ラフラの店の武器を使った冒険者〟のことですな」
「ラフラの店の武器を使った冒険者……?」
「ええ。武神祭はこの町に多くある武具店のためのお祭りでして、優勝者の持つ武器を作った者が最高の武器職人として讃えられるのです。なので今年はラフラ武器店のレイアさんがその栄光を勝ち取られましたぞ」
「そ、そうなのですね……。貴重なお話をありがとうございました……」
そう頭を下げつつも、思わずめまいを覚えるあたし。
で、でも落ち着きなさい……落ち着くのよ、エルマ……。
確かにラフラは死んでたけど、御使いがそこの武器を使っていたのは分かったわ。
ならそのラフラ武器店だかに行けば、何かしらの情報があるはず。
そう考えたあたしだったのだが、
「――はい、それはたぶんイグザさんのことですね!」
「……はっ?」
イグ、ザ……?
予想だにしていなかった名前が飛び出し、あたしは一人呆然と立ち尽くしていたのだった。
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