第4話 魔術学院入学②
入学式。新しい制服に身を着けた新入生達がそれぞれ、入学式が始まる講堂に向かっている。新入生の中には、王族や家柄の良い貴族そして魔法に秀でた平民など様々な15歳の少年少女が学院の校門を潜り、会場に向かっていた。僕もその一人である。
「おい!あいつじゃないか?」
「あいつが例の…」
「ねーあの子まさか例の子じゃない?」
「確か…今年は十二魔導師のフォレスト卿のご子息が入学されるって話?」
「そうそう!!すごい魔導師なんでしょう?入学試験も免除で入学してるって話よ!!」
「ええ!!そうなの!?」
「いいな~!私なんて必死に勉強してギリギリで受かったのに……」
「それほど私たちとは違うってことよ!!」
…ん?…何か視線を感じるような…それより急がなきゃ…
アレンは周囲の視線を感じながらも入学式に遅れないように講堂に急いだ。
入学式は予定通りに始まった。アレンは周囲の視線を感じながらも教壇で挨拶をする学院関係者の話を聞いていた。そして、見知った人が教壇に向かっているのに気付いた。
「続きまして、本校の学院長エルモア・ディスタート卿からのご挨拶です。
生徒の皆さまは教壇にご注目下さい。」
学院長かつ十二支魔導師の一人であるエルモア・ディスタートが教壇に立ち、生徒全員を見渡しながら挨拶を始めた。
「新入生諸君。入学おめでとう!これから4年間の学院での生活は今後の君たちにとって有意義な時間になることを期待している。なお、この学院では王族から平民まで魔法の才能がある魔術師が集っている。本校では実力こそが重要であり、王族・貴族・平民などは関係ない。故に個々の才能を十分に生かして学院生活に励んでほしい。以上だ!!」
学院長の言葉に皆真剣に聞いていた。やはり、十二支魔導士という憧れの存在に皆夢中であったのかもしれない。その後は生徒会長のあいさつと新入生代表あいさつが終わり。入学式は恙なく終わりを迎えた。
…そういえば…生徒会長と新入生代表で挨拶した子、容姿が似ていたな~姉妹だったのかな~……まぁ~いっか……
入学式も終わり、新入生は各々の教室に向かっていた。アレンも教室に向かっている途中で数名の男達に声を掛けてきた。
「おいっ!!お前か!?フォレスト卿の子息ってのは?」
「そうですけど!!どちら様ですか?」
「俺はお前と同じ1年のライル・ファインズだ!ファインズ家の嫡男だ!!」
「……それで僕に何か御用ですか?」
「まったく!貴族へのあいさつがなっちぇいねぇなー」
「それは失礼しました。一通り礼儀は習得したと思っていたのですが、ご不快な
思いをさせていまい申し訳ありません。」
「ふんっ!!そんなことはどうでもいいがお前!入学試験免除で入ってきたんだってな!?」
話かけてきたのはこの国の侯爵家の一つファインズ家の一人が声を掛けてきた。見た目は金髪の長髪で如何にも苦労をしらない親の七光りの少年とファインズ侯爵家に従う貴族達の取り巻きである。
「…ん?入学試験ってなんですか?」
僕は王都に来てから入学試験なんて受けていない。むしろ魔法を志すものは全員入れるのだと思っていた。
「おいおい!!どういうことだ!!入試があることも知らないのか?とんだ田舎者だな!!」
アレンの反応をみてライトとその取り巻きの貴族は笑っていた。
「あはっはっは~」
「まじか!!本当にしらないのかよ~!」
「お前、本当にフォレスト卿の子息か?難関な入試を乗り越えてやっとの思いで学院に入学できるだぜぇ!この学院はほんのそこらの学校と訳がちがうんだよ!!」
貴族の取り巻き以外の周囲の学生にもアレンとの会話にどよめきが漂っていた。
「どういうこと…フォレスト卿の子息で実力があるから入試の免除じゃないの?」
「俺もそう思っていたけど…」
「今思うと…フォレスト卿の容姿に全く似てないわね……」
「そうね…私お父様の付き添いで王都の社交界でフォレスト卿を見かけましたが、黒髪黒目ではありませんでしたわよ…」
周囲にいた学生がアレンのことを怪しい人物のような噂話をし始めた。それが広まり始めていると感じたライルは誰にも気づかれないようニヤリと笑った。
「お前、ほんとにフォレスト卿のご子息か?名だけ語り偽っている訳ではないよな~?本当に子息であるならば証拠を見せろ!!」
…んーどうしたものかな~?実の息子ではないと本当のことを言う!?
…いや!!面倒だしなぁ~
「えっーと」と話し始めようとしたところで、女性の声が間に入ってきた。
「入学式早々に何の騒ぎですか?」
そこに現れたのは生徒会長であるソフィア・コレットであった。彼女は妹のフィーネから事情を聞き早々に駆け付けたのだった。会長の姿をみたライルは驚いた顔をして言葉が漏れる。
「……かっ…会長!?」
「何の騒ぎですかと聞いているのです。ライル・ファインズさん!!」
会長の低い声にライルは口を噤んだ。ソフィアとライルはそれぞれコレット家とファインズ家と両家とも侯爵家で二人とも顔見知りであった。
「実は…こいつが実力もないのにフォレスト卿の名を語り裏口入学したのではないかと問い詰めていたところです!」
「なるほど…しかし、問い詰めるのはあなたがやるべきことですか?」
「それはそうでしょう!?この国の侯爵家の嫡子として不正があればそれを正す。
貴族として当たり前ではないでしょうか……違いますか会長!?」
「間違っていますよ!!ライルさんここは学院です。実力がすべてなのですよ。
故にここでは貴族という立場は関係ありません!!」
凛とした姿で愚か者を蔑むようにソフィアは悠々と説教を始める。
「それに、そこの新入生は学院長の公認で入学している生徒です。この学院のトップである学院長が認めているのですから貴方がどう言おうと結果は変わりません。」
「……うっ……しかし…」
「まだ何か!?………なければ解散なさい!!これから説明会があるはずです。
各自自分の配属されたクラスに向かいなさい!!」
騒ぎに群がる生徒に会長が一喝して解散させる。そして、ライルはアレンの傍を通り過ぎる際にアレンだけに聞こえるように「覚えてろよ!」と言葉を吐いて立ち去って行った。その後、会長はまっすぐに僕に近づいてきて僕に声を掛けてくる。
「大丈夫ですか?」
「あっ!はい!!助けていただきありがとうございます。」
「いえいえ。謝るのはこちらの方です。ほらっ!!謝るのよ!!」
会長の後ろから同じ青髪碧眼のセミショートの子が出てき着て謝罪をしてきた。
「……ごめんなさい…」
「…えっと…話が見えないのですが……」
「本当はね!あなたが入試免除での入学は秘密事項だったの!!それを私がついつい外に漏らしっちゃって……そしたら一瞬で広がってしまったのが原因の……」
「そういうことでしたか……でも僕もここに入試を受けて入ることを知りませんでしたし、やはり…公平を期す為に入試を受けた方がいいですかね…?」
僕の話を聞いてソフィア会長が会話に介入してきた。
「ふふっ。先ほど言ったように学院長が決めたのです。その必要はありません。
しかし、普通であれば入試をせずに入れたなら幸運と思うのが普通なのですがあなたは平等をとり、試験を受けようとする態度は立派です!!」
「いえっ!!そんな大したことではないですよ……もし、入試を受けたら落ちるかもしれませんしね……」
「さぁ…それはどうかしらね…」
「それより、あなたも早く教室に向かいなさいな!!説明会に遅れますよ!!
「そうでした!!それでは会長失礼致します。」
「ええ……」
「じゃあね。お姉ちゃん!!アレン君待ってよ!私も同じクラスだから一緒に行こう!!」
アレンが会長に挨拶し、教室に向かうところにフィーネも一緒に教室に向かっていった。その後ろ姿をみて会長はふと不思議に思っていた。
面白い方です…でも、何か得体のしれない何かを感じますね…
何でしょうか…しばらく気に留めておく必要がありそうね……
「アレン君。挨拶がまだだったよね!フィーネ・コレットです。よろしくね!!」
「さっきは助けてありがとう!!僕はアレン・フォレストこれからよろしく!!」
二人は互いに自己紹介しながら教室に向かい説明会を聞いた。
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