大好きな花
もう、楓が来なくなって3週間?俺には分からないがきっとそれくらい経っている。
どうしているだろう、何があったんだろうか。知る方法なんてないんだけど。
ただいつもの場所で、来てくれるのを待つしか無かった。
ずっとずっとおんなじ所で待っていたら、きっとあの笑顔で
「Kuro!長い間来れなくてごめんな?」
って俺の頭を撫でてくれるはずだから。
楓の絵を、膝の上っていう1番の特等席で見れるはずだから。
もっと幸せな気持ちにさせてくれるから。
待っても待っても、楓は来なかった。
俺は少し眠ろうと思い、目を閉じる。
ふと、誰かが歩いてくる音がした。
目を開けると、俺がずっと待っていた人がそこに居た。
「Kuro、長い間来れなくてごめんね。」
って申し訳なさそうな顔をして、頭を撫でてくれた。久しぶりの感覚だった。
楓を見つめると、撫でながら
「あのね、Kuro、話があるんだ。………もうお別れしなきゃいけない。ごめんね。俺、あそこ?…に行かなきゃいけなくなっちゃったからさ。」
そう言いながら、空を指さした。
「前言ってたのが悪くなって、Kuroのとこに行けなくなって。もっともっとKuroと居たかったから、治そうと頑張ったんだけど、ダメだった。」
そう言うと楓は俯いてしまった。
「Kuroとっ、もっともっともっともっと一緒に居たかった…っ、絵もいっぱい描きたかったな…っ。Kuro…、また1人にさせちゃうな…っ、ごめんね、ごめんね…っ。」
震えた声で言う楓。俺は楓がなにかいつもと違うと感じて、元気にしてあげたくなった。俯く楓をじっと見つめると、
「あはは、Kuro、ごめん。……元気だから安心して?」
ってニコニコしてくれた。
「……あのな、Kuro、幸せになるんだよ?Kuroはこんなにも可愛いんだから。きっと大丈夫。人を信じて。悪い人ばっかりじゃないよ。きっと幸せにしてくれる人がいつか来てくれるから。…俺じゃなくて悔しいけど。」
俺は返事をするように、ゆっくり瞬きをする。
「よしよし、いい子だね。…じゃあね?Kuro…」
振り返って歩いていく楓を、俺は必死に追いかけた。追いかけても追いかけても、追いつかない。
目の前が白くなる。
楓、楓…!!
目を覚ますと、いつもの場所だった。
ふと、下を見るとクチナシの花が咲いていた。
そうだ、前に描いてた花だ。楓が大好きな花。来た時に渡してあげなくちゃ。俺が見つけたんだぞ〜!!って。きっと喜ぶだろうなぁ…。撫でてくれるかな…。
ふわっと風が俺を撫でるかのように、背中を押すかのように吹いていった。優しい優しい風だった。
Kuro まる @maru_33726
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