気持ち
「ねぇ、kuro?これ、いる?」
目の前に差し出されたものは見たことがないものだった。
とりあえず、匂いを嗅いでみる。美味しそうだ。
もう一度、楓を見る。
「これ、Kuro用のだから悪いものじゃないよ?」
ニコニコと笑顔だった。
恐る恐る1口食べてみる。
こんなに美味しいものがあるのか、俺はガツガツと食べる。
「あははっ、良かった!美味しいんだね!!また、違うのも買ってくるよ!」
ニコニコとしていたので、なんだか俺も嬉しくなった。
こいつ、いや、楓の笑顔は、ふわっと笑う感じで。そんな笑顔が、俺は好きだった。
「ん?どうしたの?俺に興味あるって顔して。」
慌てて目を逸らすと、ははっ、と楽しそうに笑っていた。
楓と出会ってから、楓のマイペースさに振り回される時もあるが、俺はそんな時間も好きになった。
楓と居ると、前に言っていた
「楽しいこともいっぱいある」
って事を感じられる気がして。
「ありがとう。」
って伝えたいけど、伝え方が分からない。言葉を喋れないから。
「ん?Kuro、どうしたの?」
顔を上げると、楓はこっちを見ていた。
俺は、まだ少し怖かったけど、楓なら大丈夫な気がしたから、そっと膝の上に乗ってみる。
「お?Kuro、撫でて欲しいの?」
優しく、楓は俺の頭をなでてくれた。久しぶりのなでてもらう感覚。俺は嬉しくなった。
「よし、じゃあ膝の上に乗ってていいから俺の描くの、見ててよ!」
1つ1つ、初めて出会った時のように丁寧に、愛を込めるように、描いていく。
絵を描いている時の楓は別の人みたいだった。
いつもは、ふわふわとしていてすぐ消えてしまいそうな感じで。
絵を描いている時は、力強くて俺の絵を見て欲しいんだ!っていうような気持ちが伝わってくる。
「ん?なに?Kuro、そんなに見つめて。なんか付いてる?」
俺は早く描いてよ、とワクワクしている顔で見つめる。
「あ!わかった!早く描いて欲しいんだね?任せてよ!」
楓には、俺の思っている事が分かるのかと時々びっくりする。でもきっと勘だろう。
「よし!ほら!出来たよ!」
大きな花が描かれていた。
「これはね、クチナシっていう花なんだ!花言葉、俺の今の気持ちにぴったりだし!」
首を傾げる。
「Kuroは知らないか、教えてあげる!とても幸せです、だよ!」
楓がニコニコしていたから、きっといい事なんだろう。
この花、覚えていよう。楓がニコニコしているから、いつかあげたいな。言葉で伝えられない分、楓をもっといっぱい笑顔にさせてあげたい。
俺の心に、そんな気持ちが芽生え始めた。
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