初めて。

今日も俺は木陰で休んでいた。

そうしていると足音がした。俺は起き上がり警戒したが、

「やぁ、君。元気かい??」

ニコニコ笑顔のあいつが現れた。手にはまだ貼ってある。

俺は男を睨みながら、座る。

「隣に行っても良いってことかい?」

俺は何も答えなかった。

男はニコッとわらい、俺の隣に座った。

空を見ながら、俺に話し始めた。


「俺ね、病気なんだ。だから毎日この薬を決まった時間に飲んでてね。」

なにかは分からないが、ふーん、と思いながら男が持っているものを見る。

「これをね、ちゃんと飲まないと死んじゃうかもしれない。そんな感じ。…な〜んて、君は分かんないかぁ…」

男はニコニコしていたが、どこか寂しそうな雰囲気がした。

だから俺は、そっと…男の方に寄ってみる。

「ははっ、、君は、やっぱり優しい子だ。俺は分かってたんだよ!」

嬉しそうにニコニコしていた。よかったのかな?

「君は色んなところを怪我しているね、痛そうだな…」

怪我を見つめながら言う。少しびっくりしてしまった。

俺にこんな顔をしたのは、この男が初めてだったから。

いつもなら、前のご主人様のような怖い顔をしたり、ニコニコしていてもほんとは笑っていなかったり。

怪我を見て、悲しそうな顔をして

「ごめんね。痛かったよね。」

どうしてだろう、なんでそんな顔をするんだろう。

「君は、怖い思いしかして来なかったんだよね、この世界はいっぱい楽しい事、あるんだよ?でも俺も毎日、いつ死ぬか分からない。そんな恐怖があって、全然楽しめてないけど。俺の唯一の楽しみは、絵を描くことだから。あと最近は、君と話すことかな!あ、君じゃダメだね。え〜っと、そうだ!くろにしよう!でもローマ字ね?」


「Kuro」と書かれた文字。きっとこれは俺の名前。俺もこの名前が気に入った。 だから、男を見てゆっくり瞬きをする。

「あははっ、俺のこと受け入れてくれた?俺は楓。自己紹介遅れちゃってごめんね?」


楽しそうに笑う楓、俺は返事をするようにゆっくり瞬きをする。

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