甘くて、苦い

「ねぇ、美愛さん。」

「ん?」

「大好きですよ。」

いつものお店に行く途中、いきなり言うもんだから、私の顔が赤くなっていくのを感じる。

初めて、手を繋いだ時もこんな感じだった。

いつまで経っても、ドキドキして慣れない。


お店に入って席に着く。

「そういえばね、最近ブラックちょっと飲めるようになったよ。」

「おぉ!俺と一緒ですね?」

「ちょっと大人になれたかな…。あ、でも凛翔くんのコーヒーが1番美味しいかなぁ!」

「…ありがとうございます…っ!」

照れくさそうに笑う凛翔くんは可愛い。

「ねぇ、凛翔くん?」

「どうしました?」

「んーん、やっぱりかっこいいなぁって。可愛いとこもあるけど!」

「なんですか〜それ!恥ずかしいな…。」

「そういや、凛翔くんはあの時なんて言おうとしたの?」

「え?んー…内緒ですよ!」

「えぇ〜!!」

「ほら、本読まないとですよ!」

「はーい…。」

そんな事を言って、本を読み始める。

凛翔くんはかっこよくて、可愛くて、私にはもったいないくらい。

読むフリをして、見とれていると、凛翔くんと目が合う。

そのまま見つめ合って。

凛翔くんの顔が近付く。

「り…」

しーってした後、

「……俺にはもったいないくらい可愛いですよ。」

小さい声で、私だけに聞こえるように言ってから、周りに見られないように本で隠して、唇が触れる。



初めてのキスは、甘くて苦いコーヒーの味がした。

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コーヒー まる @maru_33726

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