第7話 男と猫?

 男性のほかにもここには人が住んでいるのだろうか。あまりの用意周到さに驚きつつ促されるまま着席する。男性は慣れた手付きでティーカップに紅茶を注ぎ私の前に静かに差し出してくれる。


 私はその様子をじっくりと観察していたが、どうやら日本人ではないようだ。準備する手付きや所作は美しく洗練されているが何か違和感を覚える。テレビなどで見る海外の執事とも違う。まるで見たこともない文化圏の人のようだ。


 例えば、利き手は左利きの様なのだが右手を使っていないとき彼はその手を自身の右肩に乗せている。私にお茶を差し出す時も、左手で茶器を持ち右手は肩に置いたままだったのだ。少なくとも私の知っている国の人間ではないようだった。


「召し上がれ」


 そう言い、男性は自分のカップにもお茶を注ぎ席に着いた。


「さて、聞きたいことは山ほどおありでしょう。時間はこれから山とあるのですから、なんでも質問してくださいな」


「じゃあ、まずは、あなたのお名前を教えていただけますか」


 私の問いに何故か彼は目を見開いてから、今までより一層笑みを深くして口を開いた。


「私の名前はフェイシュと言います。フェイとお呼びください」


「えっと、ならフェイさんと呼びますね」


 次は何の質問をしたものか。あまりにも謎なことが多すぎて何から質問していいものか分かりかねる。すると、視界に私達の周りをふよふよと飛び回りながら長い尻尾をゆらゆらと揺らしてる存在がちらつく。


「次の質問ですが、その猫のような生物はなんでしょうか」


「ああ、この子ですか。実は私も全てを知り尽くしているわけではないのですよ。実はこの子の方が実質的な此処の管理者なのです」


 意外な回答に度肝を抜かれた。こんなに可愛い子が此処の責任者なんて……。


「さぞ、驚かれたことでしょう。実はこの子話せるのですよ。私が初めて訪れたときはいきなり喋って私を脅かしてきたのです。今回はそのような意地悪をしなかったようですが」


 またまた驚きの新事実に謎の生物へと目を向ける。その生き物は目が合うと呆れたかのように「んにゃ~」と鳴いたかと思うと私の膝へと降りてきて


「フェイったらバラしちゃ面白くないじゃない」


 本当に喋った。

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