第6話 見知らぬ男
「ようこそ図書館へ」
突然聞こえた男性の声に驚き振り返ると、そこに一人の男性とその肩に乗る猫のような生物がいた。
男性は日本人の私よりも濃い濡鴉のような髪を右側だけ残し左は耳にかかる程度切りそろえられているという不思議な出で立ち。
瞳は澄んだ海のように透明感のある美しい水色で、肩幅は左右に広いものの腰に向けてほっそりとしており華奢な感じが女性らしささえ窺がわせる肢体を持っている。
そして、肩に乗る猫らしき生物もまた不思議だ。毛並みは雪が降り積もったように白く眩しくも思える。瞳は男性と同じ色合いで、耳はリスのように縦に鋭く立っている。その背には白鳥のように左右に美しい翼を広げ、尾はふさふさではあるものの蛇のように長く垂れ下がっていた。
「おやおや、驚きのあまり声が出ないのでしょうか」
穏やかな声から紡ぎだされたとは思えない、皮肉気な発言に驚きまた声が出ない。そもそも、なぜ海底遺跡に人が住んでいるのか。しかも、正体不明の生物共に。
「……あの、どちら様ですか?」
発言してから、絶対にこの言葉ではないと思ったが仕方がない。
「ん~、どちら様、と問われると答えずらいですねえ。強いて言うなら司書といった感じでしょうか。かといって本の貸し借りをしているわけではありませんがね」
男性は落ち着きを払って多少不自然な私の疑問に答えてくれた。
「きっと数多くの疑問がおありでしょうから、場所を移してお話いたしましょう」
男性は私にそう告げると、有無を言わせない形で体を翻し書架の中へと足を進めた。一拍おいて男性のセリフを理解した私は小走りで男性の後をつける。男性が司書と言っていたのは本当のようで数多く尚且つ似たり寄ったりなデザインの書架の間を彼は迷うことなく進んでいく。
そして、辿り着いた先には丸いテーブルに向い合せに置かれた椅子というカフェテリアのセットがあった。しかも、テーブルサイドにはティーセットが用意されており、ポットからは今しがた淹れたかのように湯気が立ち上っていた。
「どうぞ、お掛けください」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます