第5話 謎の図書館

 そこには、どこまでも続く書架とその中心に今まで見たこともない球体が据えられていた。いや浮いていたのだ。天井まで伸びる巨人のような書架たちはまるで囁き合っているようで私以外はいないはずなのに妙な騒がしさがあった。


 左右に目を走らせつつ中央部へと足へと進む。この部屋には明かりという明かりはなくただ、その球体だけが光を放ちこの部屋に明るさをもたらしていた。


 球体に辿り着くと改めてその大きさに驚嘆させられる。書架も大きいしもしやこの遺跡は巨人が建てたのかと勘ぐってしまう。球体の底が私の目の高さまで浮き上がっていた。

 

物質としてそこにあるほどには質量を感じられず、かといってホログラムやプロジェクションマッピングのような透明さもなく何でできているのか皆目見当もつかない。球体の四方にはどうやら書見台のようなものが設置されていたため私はそれに近づいてみることにした。


 書見台の上には特に何も置いていなく、期待外れだと落ち込んでいるとSFのように“ブンッ”という音と共に今度こそホログラムのような画面が目の前に現れた。何事かと面食らっていると画面には様々な言語が書かれていた。


「なにこれ、選べってことなのかしら」


 「日本語」と書かれた欄をタップすると(ホログラムなので実際は空中で弄っているだけなのだが)「ようこそ図書館へ」というテロップが流れた。


 なんとどうやらここは図書館だったのか。確かに、この書籍の多さは図書館と言われれば納得できる。あまりのスケールの大きさにこの施設がどんな役割を果たしているのか思考が及ばない。

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