第4話 落ちた先は
いきなり空中に放り出されたかと思うとお尻から激突した。
「いったぁ……」
気付けばダイビングスーツ越しに感じていた冷たさはなかった。落下した先に水は一滴もなかったのだ。ここは何処なのか、さっきまで海底遺跡にいたはずなのに。
辺りを見回すと海底遺跡とは違い、同じ石積みといっても全て均等な大きさに削られ表面もある程度磨かれた材質になっていた。上と形容していいのか分からないがさっきまではもっとゴツゴツしており岩肌といった感じであったのに。それとも、元々この石だったが削れ朽ちただけなのか。
端末には先ほどいた場所と同じ地点を指していた。どうやら、ダクトのようなところから落ちてきたようだ。
水中の遺跡は正面口と思われる扉は影も形もなかったが、ここには存在していた。それはゆうに3メートルほどもあり、金属製のようだ。恐る恐る近づくと扉には左右対称の緻密な彫刻がなされていた。
父は数多の文献を調べ上げてきたがその中に、当時の文化的要素について一切の記述はなかった。
私はアクシデントのことなど忘れ目の前のモノを記録するべく持参したカメラを取り出し動画をとることに。
「えー、星霜遺跡に辿り着きましたがアクシデントにより現在地は不明です。どうやら遺跡の更に地下に空洞空間があったようです。酸素マスクを外して移動中ですが呼吸に問題ありません。そしてこれをご覧ください。扉や壁面には当時の芸術や文化をうかがわせるものが数多く見られます」
順に扉の彫刻に壁画を移しながら奥へと足を進める。
廊下には左右に壁画あるだけで、突き当りの扉まで一つも部屋は見当たらなかった。だが、これは父が調べた地図と同じであった。入り口以外の唯一の扉を前にして足が止まる。
未知への恐怖か好奇心による歓喜なのか体全体に震えが走る。そろそろと手をノブへと伸ばし、掴みそして力を少し込める。知らず知らずのうちに反対のカメラを持つ手にも力が入る。
押戸ようであったそれは、私が込めた力に従って遥かな年月眠っていたなどと信じられない滑らかさで開いていく。
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