第2話 いざ海底へ
波は飛沫をあげ、船体に打ち付ける影響で船はひどく揺れている。操縦室から強風に負けぬ怒号が聞こえてきた。
「おいっ、姉ちゃん! この海域は潮がぶつかり合うから、毎日こんなもんだ! ホントにこんな中潜っていくってぇのかい!?」
「ええ! 勿論よっ。折角、潜水調査の許可が下りたのだからっ!」
そう言いながら、私は酸素ボンベの最終チェックを済ませここまで連れてきてくれた船長のおじさんの静止を振り切り海中へと身を躍らせた。
日本海に沈むその遺跡は一九〇〇年代にはじめて発見され、神代の文献に記載があることから海に沈んだ古代遺跡と考えられていたものだ。そして、書物に書かれた名前にちなみ星霜遺跡と呼ばれている。その全てが謎に包まれ、ひとときは話題をかっさらった。
しかし、地質学者によって自然形成説が出たことによってその人気も下火となってしまい、今では研究する者も少なくなって久しい。
私の父は大学で助教授となったときから、死ぬまで星霜遺跡について研究していた。そんな父の口癖は「星霜には宝があるんだぞ」。それを聞いて育った私は、いつしかあの遺跡の謎を解くことを信じて疑わなかった。しかし現実は予想以上に辛いものだった。何故なら今では誰も星霜遺跡が古代遺跡であることなど信じていないからだ。
何度調査したいと大学に届けを出しても、許可が下りずじまいだったのがついに許可が出たのだ。私にとってはこれが最後のチャンスかもしれない。逃すわけにいかない。
潮の流れを見極めながら目的地の海底をめざす。
しばらくすると、水の勢いは衰え穏やかな海域へとたどり着いた。安心し、体を仰向けに海中を漂う。太陽の光が水によって乱反射しまるで万華鏡のように煌めいている。先ほどまでのような急いている気持ちは一切なく、穏やかなものへと変わっていく。数分海の静けさと美しさに酔いしれていたが、自分の本来の目的を思い出し、気持ちを切り替え海中をまた深く深くへと潜っていった。
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