海の底から

星野詩穂

第1話 男は諦めた

 僕は文字通り膝から崩れ落ちた。

 

 彼の言った言葉は正しかったのだ。この世に必要なもの今の事実だけ。図書館は知られることを望んでいない。彼らもこんな絶望味わったのだろうか……。


 もう一度海へと潜りまた図書館を目指す。すぐに月明りが差し込めない深いところへ辿り着く。ここはこんなに静かだっただろうか。自分の心の臓の音さえも響かない無音の世界。どんどん深く潜ると遺跡が闇の中から姿を現す。入り口に立ちあんなにも、不気味に思えた鴉が今は温かく迎えてくれるように感じる。そして、僕もあの図書館の一部となるために最深部へと足を進めた。


 そして僕は図書館の住人となった――――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る