昼と夜

星ぶどう

第1話

「早く起きなさい。いつまで寝てるの。遅刻するわよ。」

 「うーんもう、うるさいな。」

 母親の声で俺はしぶしぶ起きた。今日は月曜日。これから1週間、また学校が始まる。昨日俺は友達とネットで夜遅くまでゲームをしていた。寝たのは夜中の2時だったかな。どうりで眠いわけだ。今は朝6時55分。目覚まし時計は6時30分にセットしているが、まともに起きたことがない。いつも俺は朝7時に家出ている。そして7時10分のバスに乗る。それに乗らないと遅刻するって「ヤバい。」と俺は思った。

 「もう時間がないじゃないか。」

 俺は飛び起き、慌てて着替えてカバンを持って家を出た。案の定バスは間に合わなかった。俺は遅刻した。

 キーンコーン、カーンコーン。

 「な、今日の夜もゲームやらない?」

 今日も学校が終わり帰りに友達に誘われた。

 「いいよ、じゃあ夜の11時から。」

 「オッケー。じゃあな。」

 「じゃ。」

 俺はまたゲームの約束をして家に帰った。その夜もまたゲームを友達と2時間ぐらいやった。

 「早く起きなさい。昨日遅刻したでしょ。」

 「うーんもう、わかってるよ。」

 俺はしぶしぶ起きた。時計を見たら7時58分だった。遅刻確定だ。だったら別に慌てなくてもいい。俺はゆっくり着替え、昨日は食べられなかった朝食をきちんと食べた。

 「なにゆっくりしてるの。遅刻してるのよ、早く食べなさい。」

 「うるさいな、わかってるよ。」

 その日の朝、昨日に引き続き今日も遅刻したので担任に呼び出された。

 「2日連続遅刻とは最近たるんでるんじゃないか。夜は何時に寝ているんだ。」

 「まあ、2時ぐらいに寝てます。」

 「なに、2時だと。もっと早く寝なさい。だから早く起きられないんだ。」

 「ふぁーい。」

 「あくびをしながら返事をするな。」

 キーンコーン、カーンコーン。

 「な、今日もゲームしようぜ。」

 「うん、でも今日はちょっと早めに終わらせてくれ。今日担任に呼び出されてさ、さすがに3日連続は遅刻できないからよ。」

 「わかった。」

 その夜、ゲームは12時に終わらせて俺は寝た。だが次の日、起きた時間は6時50分だった。俺は急いで起きて準備したので、なんとかバスに乗れて遅刻をせずにすんだ。その日からゲームは12時までにするようにした。おかげで遅刻をしなくなった。それでもいつもギリギリで、朝は慌ただしいんだが。

 「おい、起きろ。授業中だぞ。」

 木曜日の2時間目、英語の授業中に俺は起こされた。

 「しっかり話を聞け、今大事な話してるからな。いいか皆、今から言うところはテストに出るからな。」

 「はあテストか、だる。」

 今から3週間後に定期テストがある。俺は正直テスト前もゲームしてるから、赤点が多かった。それにしても毎日遅くまでゲームをしているせいかとても眠かった。

 それからもずっと毎日夜遅くまで友達とゲームをしていた。気づけばテストまであと1週間になった。

 キーンコーン、カーンコーン。

 「今日も12時からな。」

 「了解。」

 テストが近づいているのにも関わらず、今日もゲームの約束をした。家に帰ると母親が玄関に立っていた。

 「これからテストが終わるまでゲームは禁止です。あんた全然勉強してないでしょ。もう1週間しかないのよ。ちょっとは真面目にやりなさい。」

 「ちっ、うるさいな。俺の勝手だろ。」

 そういうと俺は母親の止める声も聞かずに自分の部屋に入った。

 その夜12時になったのでゲームをしようとしたら母親が部屋に入ってきた。

 「勉強してるかと思ったら。ゲームは禁止って言ったでしょ。次赤点1教科でもとったら承知しないからね。」

 「大丈夫だよ。何とかなるって。」

 「いいえ、許しません。いいから早く寝なさい。早く寝るか勉強するかです。ゲームは没収します。」

 「おい、何するんだよ。」

 俺はゲームを取り上げられてしまった。

 「わかったよ。じゃあ朝起きてから勉強するからさ。今はゲームやらして。」

 「早く寝ないと早くは起きられません。」

 そう言って母親はゲームを持ったまま俺の部屋を出て行ってしまった。

 「ちっ、何だよ。あーいいさ、いい点とって見返してやる。」

 とは言っても今の俺は毎日夜更かしをしていたせいで、生活リズムは完全に昼夜逆転していた。 なので当然次の日の朝は早く起きることが出来ず、結局いつも通り出かけるギリギリの時間に起きた。そして俺は思った。

 「そうだ、早起きをする代わりに夜遅くまで勉強をすればいいんだ。」と。

 そしてゲームを取り上げられた日からテストまで一生懸命勉強をした。毎日遅くまで勉強をしているせいで学校ではとても眠かった。

 「いつまで寝てるの、早く起きなさい。」

 テスト当日俺は母親の声で目が覚めた。時計を見ると7時を過ぎていた。

 「やっべ。」

 俺は久しぶりに遅刻した。最悪のスタートだ。その後も眠すぎて集中できず、結局テストはいつもとあまり変わらず赤点が多かった。そして俺は思った。今の俺は完全に夜行性になっている。だから朝や昼は元気が出ない。ならば、夜に学校に行くようにして昼を寝る時間にすれば早起きもできて遅刻をしなくなると。

 ある日、学校で生活習慣を聞くアンケート調査が行われた。そのアンケートはどうやら教育委員会にいくらしい。

 それから1ヶ月が経ったある日、テレビで教育委員会の一番偉い人が何やら中継で話していた。

 「えー1ヶ月前に全国の学生さんに生活習慣のアンケートをとりました。その結果7割以上の学生さんが夜の12時以降に寝ていて、夜型になっている人が多かったです。ということは多くの学生さんは睡魔により学校の授業に集中できなかったり、寝坊してしまうことが多いということです。しかし夜型から平常に戻すのはかなり厳しいです。そこで我々教育委員会は多くの学生さんが集中して学べるように夜に学校に通い、昼は睡眠という形式に変えるよう全国の学校に要請いたします。」

 俺は嬉しかった。これで遅刻することがなくなると思ったからだ。

 その衝撃的な発表から1週間が経ち、俺の学校も夜の8時登校になった。今俺は夜の6時40分に起きて、7時20分のバスに乗って学校に行っている。それに乗れなかったら遅刻確定。でも俺は幸せだった。

 キーンコーン、カーンコーン。

 「な、今日の昼の11時からゲームしようぜ。」

 「あー、いいよ。」

 俺は学校の帰りにゲームの約束をして家に帰った。あれ?ゲームは母親に取られているのではって?実はあの後これからは勉強を頑張ると必死に説得をして返してもらった。俺はその日も昼遅くまでゲームをした。

 次の日、「いつまで寝てるの、早く起きなさい。」

 母親の声で目が覚めると夜の7時30分だった。

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昼と夜 星ぶどう @Kazumina01

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