第19話 - ダンジョン化
街の様相が変わり、産業が増え、都市になりつつある
病院が出来た事で薬剤の研究も進み、一層街を訪れる人が増えた
今日は南門が騒がしいので向かった
サイクロプスの家族が立往生している
背丈は10メートルにも及ぶ巨人族だ
医者に診てもらいたいらしい
なるほど、街は大きな魔物が入れるような作りではあるが、大きくても5メートルほどの身長くらいまでしか耐えられない
どうしたものかと見ていると、サキュバスたちがきた
サキュバスたちもどうするか考えあぐねている
今まではどうしていたのだろうか、聞いてみることにした
するとアメリとアンバーはこちらに気づき、近寄ってきた
「どうしたんだ?」
「見ての通り、大きすぎて入れないんです」
「そうだろうな、今まではどうしてたんだ?」
するとアメリが魔石を取り出した、何やら加工され、魔術が付与されている
「これはなんだ?」
「魔物のサイズを変える魔術を付与した魔石です、今まではこれである程度対応できていたんですが、さすがにサイクロプスともなると限界があるのでどうしたものかと」
今までは魔石に付与した魔術でサイズを変更し、街を出るときに返却してもらう形で対応していたそうだ、それでも街に大型の魔物が増えた場合はお断りしていたこともあったとか
確かに、魔物の大きさは今まで考慮していなかった
大小様々な魔物がいるものだ、サイクロプスの家族には悪いが、今回は外で診てもらおう
家に帰り、ティルに相談した
すると「迷宮の魔石」が問題解決に使えそうとの事だ
迷宮の魔石とは、ダンジョンを生成している核となる魔石だ
破壊することでダンジョンが消えるが、持ち帰れるようなケースもあるらしい
そしてその魔石はダンジョンを作ることになるが、街全体をダンジョンとして扱い
入場する者のサイズを一定のサイズまで強制するような制限を設ければよいとのこと
他にもいろいろな条件はつけられるらしいが、この方法であれば今回のような問題はとりあえず解決できるだろう
また、今後街に関する様々な問題や土地問題の解決にも繋がりそうなので取り入れることにした、ちなみにエルフの街やドワーフの街、竜の住処などもよく使われており侵入を拒む制限があるのでなかなか見つからないのだとか
ティルがここに嫁ぐときひとつ持ってきていたそうで、今回はそれを使わせてもらうことにした
ダンジョン核の魔石は思ったより小さかった
基本は大きいらしいが、ダンジョンを封じる目的で壊すと、たまに欠片が手に入り
それがこれらしい
生きているかのように微妙に形がゆらぐ不思議な石で主に魔力や魔石を吸収して力を蓄える
そして付加したい効能に合わせて魔力を消費するのだとか
さっそく、長の家の近くに祭壇を設け、配置した
まずはダンジョンの大きさを街の大きさまで広げ、効果範囲を広げなければならない
これにはかなりの量の魔石を投じた、俺自身も魔力を吸わせたが俺の量ではまったく足りなかった、聞くと竜でさえ足りないのだとか
街はかなりの大きさになってきたので魔石を投じるほうが効率はいいらしい
一か月ほどかけて俺の魔力も回復しては注ぎ、魔石も取れれば注ぎ、ようやく街全体を覆う事が出来た
結構時間がかかった、魔石もかなり大きくなっている
ダンジョンの基本特性として、入り口を定めなければならない
それ以外からの侵入が不可能となるように、これは嬉しい機能だった
望む場合複数の入り口が設定でき、外からどのように見えるかも設定できた
入り口は今のところ南門と空港の上に設定、見た目の変更はなしだ
基本障壁が張られるので侵入はできないらしいが見た目の変更を行わない場合
強力な術で破られることもあり得るそうだ
しかし空から見えないとなると空港グリフォンたちが迷ってしまいそうなので無しにした
次に入り口の制限を追加しなければ
一定のサイズ以下になるまで小さくするような制限を設けたい
また、入り口を出た瞬間に元のサイズに戻るとなるといろいろ問題がありそうなので工夫が必要だな
入り口の外までダンジョンを伸ばしておこう
また、サイズ制限がかかるのは魔物や魔獣、竜など一部の巨大な生物のみとした
荷物まで小さくなると価値が変わってしまうからね
これにも結構な量の魔石が必要だった、半月ほどかかったかな
そもそもダンジョン内にいる生物に常時魔術効果を適用するので魔力消費量も莫大になるそうだ
核魔石は追加された制限に応じて、その制限を維持するための魔力を常時作り出す器官を生やす、心臓が増えるようなものか、管理するダンジョンが大きいほど各種制限の必要魔力量も増える、効果が多いダンジョンほど広く作るのが難しくなるようになっていた
普通は長い年月をかけて魔石が魔力を吸収し、ランダムに効果を付与したり、ダンジョンを広げたりを繰り返すそうだ
それを竜やドワーフ、エルフたちは各々の秘術でコントロールしているんだって
街の魔道具を維持するだけの魔石は残しつつ、街の外からも買い漁り、街の運営資金も相当使い込んだ
しかしおかげで将来的な土地の拡張にかなりの自由度が生まれた、決して高い買い物ではない
ダンジョンは効果範囲を広げる事もできるが内側の空間を歪ませて見た目以上に内部を大きくすることもできる、しかしこれは街を覆うだけの魔力量を利用して家1個分くらいしか拡張できない
さすがに燃費が悪すぎた、だがこれから少しずつ拡張していけるように頑張っていこう
その他、魔石を採掘できる部屋など自給率を上げる空間も設定
魔物を生み出す器官はいらないので当面使わない、核魔石が自身を守るために発達させる器官だが街には戦闘員がいるので問題ない
部屋で区切ってしまえば部屋の中の天候もある程度自由に設定できる
これは将来農場を部屋として設定し、一年中作物が取れそうだ
現状は魔石が不足しているので後回しだが、面白い機能だ
3か月ほど核魔石をいじりながら没頭しているとまめいが話しを聞きつけ現れた
「なー玄人」
「なんだ?」
「その魔石で部屋を作るとその部屋は別の世界のようにできるんだろ?」
「そうだな、規模に応じて魔石が必要になるけどな」
まめいはもじもじしながら話し始めた
「いつか、あとでもいいからさ、いやでも近いうちがいいんだけど」
どっちだよ
「海がほしい」
でたでたこのわがまま娘、私欲のために街の経費を使おうとするな
「ダメー」
「なんでぇ?海鮮もとれるようにしたらみんなも喜ぶだろ?」
意外にもまともな理由だ、だがダメだ交易する意味が薄くなるし、そもそも他の理由もある
「魔石が生み出す生物は常に魔力にさらされるから魔獣になっちゃうの」
「そっかぁー、ちぇー、海水浴したいなぁ」
やっぱり私欲のためか、この娘は...
「なー玄人」
「なんだよ」
まだ諦められないのか?海くらいならティルも誘っていつか行ってやろうかなぁ
すると、まめいがいきなり脱ぎ始めた
俺はどう声をかけるべきかわからなかったが、理由がわかった
「じゃーん!どうだー?似合うかー?」
新しい水着だ、またアラクネに依頼したんだろう
「おお、なるほどな、いいじゃないか」
「ふふー、ここに来てからずっとこういうの忘れてたからなー」
ものすごくご機嫌だ、まだ元の世界が恋しいんだろう
俺は力を身に着けやることが増えたが、まめいは非戦闘員だし
料理を作る毎日で代り映えしない、たまにはハメを外したいんだろう
「そうだなぁ、夏の風物詩だ、いい季節になったら海まで行ってみるか?」
まめいは飛び上がりそうなほど喜び、同意した
「ほんとかー?約束だぞ!ぜったいだぞ!」
まめいの喜ぶ声を聞いたティルとミミが様子を見に来た
ティルがまめいを見て話し出す
「その衣装はなんですか?あまり実用性がなさそうですが...」
まめいが自慢げに話し出す
「これはなー、水着というんだ!海や湖に入るときこれを着るんだぞ
男どもは水着の女にコーフンするんだ!」
ある意味間違ってないが間違った情報を伝えるんじゃない、まめい
ティルとミミが目の色を変える
ティルが真剣な表情でまめいに掴みかかる
「まめい、それはどちらで手に入れたんですか!?」
まめいがたじろぎ、返答した
「アラクネに頼んで作ってもらったんだ」
ティルとミミがそれを聞くとダッシュでアラクネのところへ走っていった
やっぱり気になるものなのか、これほどの食いつきを見せるならダンジョンに海や湖を作り
魔獣のいない安全な水辺で水着を着用する男女の憩いの場、なんてものもいいな
入場料を取ればさぞ儲かる事だろう、初期投資は必要だが維持費がほぼかからず永遠に黒字が出る産業になりそうだ、まめいのおかげで新しい産業に気づけたな
俺はまめいに感謝を述べることにした
「まめい!」
まめいは何かを期待しているのか、ドキドキしながら返事した
「な、なんだ...ティルが先だぞ」
「ありがとう!海水浴場は新しい産業になりそうだ!早速取り入れよう」
まめいはがっかりしながら返答した
「う、うん...」
まめいはしょんぼりしながら戻っていった
それから俺は後日、ティルの水着試着会に付き合わされた
…
しばらくして、ダンジョン内の拡張空間に海水浴場が設置された
男女のデートスポットとして各地から亜人を中心に利用され
浜辺には屋台が並び、魔獣が出ない、安全なダイバーツリーの観光名所として非常に大きな利益を上げた
水着の売上も好調、訪れた人たちが旅行ついでにいろいろとお土産を買っていくので想像していたより大きな興行収入となった
俺たちもティル、まめい、ミミを連れて楽しんだ
アヌビスも屋台のご飯を満喫している
新しい娯楽としてボールを開発した、ビーチフラッグ、浮き輪なども作り
ビーチバレー、ビーチフラッグなどみんなの娯楽として大いに楽しまれている
デートスポットはサキュバスたちのお気に入りの場所となり、ナンパ待ちという罠を張りながら男性の精を頂く餌場になっていた
年頃の独身男性がよく罠にかかっているが、やりすぎて風紀を乱さないか心配だ
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