第6章 イロトリの破壊

              第6章 イロトリの破壊

 

 2人が公園のマンホールから出ると外は夜になっていた。ロメルスはスゥーっと息を吸うと気持ちよさそうに言った。

「ああー、夜だけど下水道やイロナシと違って、光もいっぱいで音もするから気持ちいいな」

 レムルスはうなずくと言った。

「確かに。あそこと比べると外はやっぱり気持ちいいよね……じゃあ、ドンの家に行こうか」

 2人がドンの家に着くと、2階の部屋から明かりが漏れていた。ロメルスが

「昔からこっそり呼び出すときはこうやってたんだ」

 と言って、近くの小石を拾って部屋に向かって投げるとコンという軽快な音と共に窓に小石が当たった。すると窓が開きドンが顔を出した。

 ドンは2人の方を見ると驚きの表情を浮かべた。ロムルスは片手を振りながら小声で「よっ、とりあえず降りてきて」と言うと、ドンはうなずきながら家の中に入って行った。

しばらくすると、バタバタという音と共にドンが玄関を開けて出てきた。そして、ロメルスに聞いた。

「どこか怪我してないか?」

 ロメルスは「うん」と言うとドンは、ほっと息を吐き顔を緩めながら

「おかえり」

 と言った。

 ロメルスはニッと笑うと

「ただいま」

 と返した。

 すると、今まで黙っていたレムルスがノートを取り出しながら言った。

「実はドンさんに手伝って頂きたいことがあるんです。」

 そして、ロメルスとレムルスはヨトュンヘルム王の物語の真実、イロナシの人々の様子、イロトリの破壊をドンにも手伝って欲しいと言うことをドンに語った。ドンは驚いた表情になったが、2人の話を止めることなく最後まで聞いていた。

 2人は話し終えると、不安げな様子でドンの言葉を待っていた。

 ドンは腕を組み、目を閉じながら黙っていた。するとパッと顔を上げると言った。

「なるほどな。わかった、手伝うぜ」

 ロメルスは目を見開きながら言った。

「本当か!? 信じてくれるんだな?!」

「おう。まだちょっぴりヨトュンヘルム王が悪い奴だってことは信じられないけど、わざわざロメルスが嘘を言うわけないしな」

 ドンはロメルスを見ながらそう言うと、レムルスが言った。

「あの、家族の方はいいんですか? しばらく帰って来れなくなりますよ」

 すると、ドンはめんどくさそうに頭の後ろで腕を組みながら言った。

「うちは、親父が1人だけの片親なんだけどさ。稼いだ金をすぐ酒に変えちまうクソ親なんだよ。だから、あんな奴がどんなことになろうと知ったことないよ」

 レムルスは申し訳なさそうに「すいません」と謝まった。

 ドンは笑いながら、言った。

「気にすんな。それと、敬語はやめてくれ。聞いててムズムズする」

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