第4章 王族の子供
第4章 王族の子供
昼休みになると、ブランコの辺りでレムルスを中心に少年達が集まっていた。1人の少年がレムルスに言った。
「ロメルス、やっと学校に来れるようになったんだな」
レムルスはにっこり笑いながら言った。
「ああ、ある程度は気持ちの整理ができたからな。」
先程の少年が笑顔でレムルスに言った。
「よかった。ロメルスが、学校に来ないとドンもしょげてるし、つまんなかったんだよ。ほら、やっとロメルスが来たんだぞ。なんだよ緊張してんのか?」
少年がドンの肩を叩くと、ドンは「あぁ」とだけ言った。するとレムルスが少し寂しそうな顔になると言った。
「実はさ、俺しばらく学校に来れなくなるんだよね」
他の子供たちは寝耳に水という様な顔になった。それから誰も何も言わないでいると、先程とは別の少年がレムルスに聞いた。
「な、何で来れないの?」
レムルスは頭の後ろで手を組むとめんどくさそうに言った。
「なんかさ、俺みたいな親がいねー子供は、国から孤児院に入る様に勧められるんだ。だからしばらくは手続きとかが必要で学校にはしばらくは行けそうにないんだよ」
すると少年達はホッとしながら言った。
「もう学校に来れないとかじゃないんだな」
レムルスは笑いながら言った。
「なんだよ、俺に来て欲しくないってか」
そう言うと皆が笑った。しかしその中でドン1人だけが笑わずじっとレムルスを見ていた。
放課後になり皆が帰り支度を始めているとドンがバックを持ってロメルスに近づいて言った。
「なぁ、今日は2人だけで帰ろうぜ」
周りの子供達が、えーっと不満の声をあげるとそちらに向かってドンが言った。
「悪いな、幼なじみ同士で積もる話をするんだよ。」
レムルスは少し黙ったが、うなずいた。
帰り道では主にドンがレムルスに話しかけており、話の内容は主にアウスに関する思い出であった。するとレムルスは少し苦虫を潰した様な顔をした。それを見かけたドンがレムルスに聞いた。
「ロメルス、大丈夫か?」
レムルスは手を振りながら言った。
「大丈夫、ただじいちゃんの話を聞いてると少しだけ辛いんだ。悪いな、切り替えたつもりなんだけどな……」
ドンはじっとレムルスを見ると、言った。
「悪い、嫌なことも思い出しちまうよな」
そして、ドンの家に着き、レムルスが「じゃあ」と言って離れようとしたら、いきなりドンがレムルスの腕を掴んだ。そして、レムルスの顔を見ながら、言った。
「お前、ロメルスじゃねぇだろ。誰だ!?」
レムルスは何か言おうとしたがドンの目を見ると何も言わなかった。
「黙ってるってことは、肯定と捉えていいんだな」
するとレムルスは言った。
「そうですよ、よくわかりましたね」
「当たり前だ、幼馴染みなんだからお前のなりすましなんて1発で分かっちまったよ。ただ、他の奴らはお前のことをロメルスと思っているようだがな」
ドンは、さらに激しくレムルスに言った。
「で、ロメルスをどこにやった!? 言わねえとただじゃ済ませねえぞ!」
しかし、レムルスは怯むことなくドンに言い張った。
「ロメルスは無事です。今は私の家にいるだけです。危害を加えることは一切していません」
しかしドンは手を離さずにレムルスに言った。
「はぁ!? じゃぁロメルスはお前ん家でお前のフリしてお前の家族を騙してるってことかよ?」
レムルスはうなずきながら答えた。
「はい、そうなりますね」
すると、ドンはさらにレムルスを掴む手を強く握ると聞いた。
「じゃあ、お前の目的って何だよ?」
けれどもレムルスはドンの質問に答えずに話した。
「とにかく、ロメルスは無事2週間後には帰ってきます。その時に色々とお話を聞いてください」
しばらく、ドンはうさんくさいものを見る目でレムルスを見ると手を放し、言った。
「……わかった。今はお前の言葉を信用しする。ただし、ロメルスが傷1つでも付けて帰ってきたら、お前が何処にいようと容赦はしねぇ」
レムルスは頷きながらその場を離れロメルスの家の方へと帰って行くと、ドンはレムルスが見えなくなるまでじっと見ていた。
翌朝、まだ誰も起きていない時間、レムルスはバッグを提げ、フード付きのマント着て公園の方向へと向った。
しばらく歩くと、ロメルスを送ったマンホールの上に着いた。そしてマンホールの蓋を開け、レムルスはバッグの中から、ランプを取り出すと下水道の中に入って行った。
しばらく下水道を真っ直ぐ歩き、突き当たりの壁に着いた。そこを左に曲がろうとすると、
「レムルス!」
とレムルスの後ろから聞こえた。ビクッとレムルスが後ろを振り向くとそこにはレムルスと似た様な服を着たロメルスが立っていた。
レムルスは、ポカーンと口を開け、ロメルスを見ていた。レムルスの顔を見たロメルスはぷっと言うと笑い声をあげた。するとレムルは怒りの表情を浮かべ大きな声でロメルスにどなった。
「あっ……あなたはここで何をしているんですか!? 今あなたが王宮に居ないことが父上と母上にばれてしまうと国中の衛兵達があなたを探し出してしまうんですよ!」
レムルスの声が下水道に反響した。しかしロメルスは、意にも解せずといった様にレムルスに言った。
「それは、全然気にしなくていいぞ」
レムルスは目を見張りながら、「はい?!」と言った。すると、ロメルスは、まぁ聞け、とでも言うように片手をレムルスの前で軽く動かしながら話し始めた。
「実はさ、王妃様に俺がレムルスじゃないってばれちまったんだ。王妃様は鼻が人1倍鋭いらしくて、俺がお前を探し出そうとしたところを見られちまってさ、つい、全部言っちゃったんだ。あと、王様の方はヨハンさんが呼んだお偉いさんとのセッタイ? ってのをしてるらしい。だから俺が出て行ったことなんて微塵も気づいんだよ」
レムルスは顔を片手で覆うとはぁと、ため息を吐きながら言った。
「じゃあ、今君がここにいるってことは僕が何をしようとしてるのかわかっててきたんだよね?」
「あぁ、イロナシを探すんだろ」
ロメルスの言葉を聞いたレムルスは、一層深くため息を吐きながら言った。
「じゃぁ、付いて来たらだめだよ。イロナシは危険な場所なんだ。もしかしたら一生出られなくなるかもしれないんだよ」
必死にレムルスは訴えかけるが、ロメルスは怯む様子もなく「ふーん」と言うと、レムルスが言った。
「じゃあ、なん「だって、友達だから。」
しかし、ロメルスがレムルスの言葉に重ねて言うとレムルスは理解ができない、といった顔になった。ロメルスがさらに続けた。
「友達が何か困ってそうだったら助けるのは当たり前だろ」
そう言うとロメルスが「ほら、行こうぜ」と言って歩き出した。
しばらく、ポカーンと立っていたレムルスは、先を行くロメルスを見ながら1人小さく呟いた。
「……はぁ、全然意味わかんないよ」
するとロメルスが前から言った。
「おーい、俺、道わかんねーんだからお前が前行ってくれよ」
レムルスは再び大きな息を吐くとロメルスの元へ走って行った。
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