第2章 邂逅

                第2章 邂逅


 アウスが亡くなって3日がたった。

「ドン君、少し待ってくれる」

 友人たちと帰ろうとしていたドンにロメルスやドンのクラスの先生が声をかけた。

「ロメルス君、おじい様が亡くなられてから全く学校に来ていないでしょう。だから、プリントを届けるついでに様子を見てきてくれないかしら?」

「わかりました」

 ドンはうなずきながら、答えた。

 帰り道、ドン達が歩いているとその中の1人がドンに声をかけた。

「ドン、先生にもらったプリントどうすんの? それに様子を見ようにも俺等も葬式以来ロメルスに会えてないじゃん」

 ドンは少し黙って、言った。

「……そうだな、でもあいつ、じいちゃんの事めっちゃ好きだったじゃん。だから今は誰にも会いたくないんだよ。プリントはポストの中に入れといてろうぜ」

 しばらくドン達が歩いているとロメルスの家についた。家はカーテンが閉めきっており、光のイロも見えなかった。ドンが、家のドアを叩いた。誰かが出てくる気配がなかった。すると、ドンがドアに向かって声をかけた。

「ロメルス今日はプリントを届けにきたんだ。……もしさ、俺等にできることがあれば、なんでも言ってくれよ」

 しかし、返事は返って来なかった。それから、ドン達は少し残念そうな顔をしながら帰って行った。家の中にはロメルスが居りドン達が帰っていく姿を見ながら「ごめん」と小さく呟いていた。

 夜、満月が町を照らしていると、公園に1つの影があった。人影は、ロメルスだった。ロメルスはアウスの亡き後、毎晩遅くまで起きて、町を歩いたり、公園のベンチにずっと座ったりし1番ドリが鳴く前に家に帰ってお昼まで眠ると言う昼夜逆転の生活になっていた。

 この日もロメルスは公園でぼーっと空を眺めていた。すると、公園の入り口に大きなバッグを肩に提げた、茶色いフード付きのマントを着た子供が立っていた。その子供はロメルスに近づくと声変わりが始まった少年のような声で話しかけた。

「なぜ、空を見ているんですか?」

ロメルスは少し子供の方を見るが、また空に目線を移すと答えた。

「この前さ、俺のさ大好きなじいちゃんが死んだんだけどさ。じいちゃん、最期にさ、俺に、誰かのために動きなさいって言ったんだよ、でも俺、情けねぇことに、じいちゃんがいなくなって頭がこんがらっちまってどうすればいいのかわかんないんだよ……だから空見てればじいちゃんが教えてくれねぇかな、と思っ……うっ……ズッ! 悪りぃ今の話聞かなかったことにしてくれ」

 すると子供はフードを取るとロメルスに話しかけた。

「もしかしたらおじいさんは私のためにその様な遺言を残したかもしれませんね」

 ロメルスが不思議そうに子供の方を見るとぎょっとした顔になった。そこにはロメルスの顔に瓜2つの顔が月明かりに照らさられていた。

 ロメルスが驚いた顔のまま固まっているとフードの少年がロメルスに笑いかけながら言った。

「驚くのも分かりますよ、私も初めてあなたを見た時、心臓が飛び出すかと思いました。よければ隣を開けてくれませんか?」

 ロメルスはまだ驚きの表情を浮かべたままだったが隣を少し移動した。それから、少年はバッグを地面に下ろしロメルスの隣に座り、話し始めた。

「そういえば、自己紹介がまだでしたね。この国の第1王子のレムルスといいます。」

 ロメルスはしばらくレムルスの顔を見ていたが、だんだんと落ち着きを取り戻していった。そして、レムルスに疑問の顔を浮かべて言った。

「さっきのはどういう意味だよ?」

 すると、レムルスはパッと笑顔になると言った。

「はい、私たちは声や身長がほぼ同じ。特に顔はこんなにそっくりですよね。だから、2週間入れ替えっこをしてみませんか? あと、私のことはレムルスと呼んでください」

ロメルスは、理解ができないといった顔をレムルスに向けながら、言った。

「……親とか友達に一発でバレちまうって」

 すると、レムルスはいきなりロメルスの肩を掴んで言った。

「大丈夫、私はあなたのことをずっと見ていたのであなたの仕草は、全部頭に入っています。それに、私の仕草でしたらきちんと教えてくれる人がいます」

 ロメルスは、かなり引き気味でレムルスのことを見ていると、レムルスが少し伏し目がちになりながら言った。

「……私は今まで王宮の外にほとんど出たことはありません。なので、小さい頃から外へ出ることに強い憧れを抱いていました。あなたのことをずっと見ていました。なので今あなたがはおじいさんの事で大変なのも分かっています。それでもお願いします、私と2週間入れ替わってください」

 ロメルスは少し迷った顔になり、しばらくの間黙っていた。しかし、若干の迷いを見せながらもレムルスに言った。

「……わかった、やるよ」

 すると、レムルスは顔を輝かせ、ロメルスの手を取り言った。

「ロメルス様、本当にありがとうございます。感謝してもしきれません」

 ロメルスは少し顔を赤らめながら言った。

「ロメルス様ってのと敬語はやめて。どうせタメだろ」

 レムルスは困惑の顔を浮かべ、ロメルスに聞いた。

「確かにそうですが。……ではどのようにお呼びすれば良いのでしょう?」

 ロメルスはめんどくさそうに言った。

「普通にロメルスでいいだろ。あと“敬語”」

 レムルスはさっきの笑顔になると言った。

「わかった、ロメルス!」

 しばらく互いにで何も言わず見つめ合っているとどこからともなく犬の吠える声が聞こえてきた。するとレムルスが笑顔で言った。

「じゃあ、さっそく入れ替えを始めようか。まずロメルスを王宮にこっそり入ってもらう必要があるんだ。そのための道があるからついてきて。」

 そう言うとレムルスは公園の入り口の方に歩いていった。ロメルスはレムルスに黙ってついて行った。しばらく2人は歩いていると1つのマンホールの上で止まった。そして、レムルスがマンホールの蓋を開けながら言った。

「じゃあこの中に入って、ただ中は暗いからこのランプを使ってね」

「こん中に入るの!?」

 レムルスが光のイロを使ってできたランプをロメルスに渡そうとするとロムルスは驚いた顔でレムルスに聞いた。

「うん、今下水道は、イロのがあるから全く使われていないんだ。だから、衛兵達に見つからないように王宮にたどり着くにはちょうどいいんだ」

「“ちょうどいいんだ”ってこん中は暗すぎんだろ! 他の道はないのかよ」

 レムルスはうなずきながら答えた。

「うん、ここしかないよ」

 するとロメルスは頭を抱え「うーん」とうなり始めた。

しばらく、ロメルスはうなり続けていたが観念したようにレムルスの話を聞いていた。

「いい?この中に入ったらまず真っ直ぐに歩いてね。すると壁に突き当るから。そこを右に曲がってね。そこから歩いて2番目の角を左に曲がる。後はずっと真っ直ぐに進めばいい。すると上に穴が開いている所を見つけれると思う。そこの近くにある鉄梯子を上がれば、上で僕の執事が待機してると思う。後は、彼の指示通りに動いて」

 レムルスが話し終えると、ロメルスは再び混乱した顔で言った。

「も、もう1っ回言ってくれ」

 そしてロメルスは再度道を確認し、レムルスからランプを受け取り、下水道の中に入ろうとした。その時上からレムルスが声をかけた。

「最初は絶対右だからね。間違えたらダメだよ」

 ロメルスがは「分かった」とうなずくと暗闇の中へと消えていった。

そして、完全にロメルスの気配が消えるとレムルスはマンホールの穴に向かって「しばらくの間、王宮をよろしくね」と呟いた。

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