第1章 平民の子供

              第1章 平民の子供


「いっけー、あと1人だ」

町の公園には、数人の少年たちが中心に集まっていた。1本の線で分けられた四角の中には1人ずつ少年がおり、片方の少年が風のイロをもう片方の子供に向かって投げた。しかし、イロはふわっと上に浮かびそのまま相手の四角の中に入ってしまった。そのイロを相手の少年が拾い投げた。するとパシッという軽快な音ともにイロは相手の肩に当たった。

 太陽が沈みかけてきた頃、少年たちは帰宅路についていた。

「ロメルス! お前やっぱすげーな。風のイロをあんな一直線に投げれる奴なんて他にはいねーよ!」

他の子供たちより大柄なドンがロメルスの留守の肩を叩きながら言った。

「当たりまえだろ、あんな奴俺の敵じゃないぜ」

そんな事をわいわいと話していると子供たちは1人1人と家に帰っていた。ロメルスは町の外れに祖父のアウスと2人で暮らしていたのでいつも家に着く時は1人になっていた。

「じいちゃん、ただいま」

ロメルスが元気よくドアを開けるとアウスの返事がなかった。すると、ロメルスは家の近くの工房に向かった。アウスは陶芸家なので工房で皿や壺を作っていた。ロメルスが工房を覗き込むと、アウスは、赤いイロを使い皿を固めていた。

「じいちゃん、ただいま」

ロメルスがもう1度声をかけるとアウスはやっとロメルスの帰宅に気づき、言った。

「おかえり、ご飯はすぐ作るから居間で少し待っていなさい。」

「わかった」

ロメルスが居間で待っているとガタンという大きな音が工房の方から聞こえた。

「じいちゃん、大丈夫!?」

ロメルスが工房に向かうと、工房の道具が辺りに散らばっており、その中でアウスが頭を押さえていた。ロメルスが心配そうに覗き込もうとするとアウスは立ちながら言った。

「少し立ちくらんでしただけだ。さぁご飯の準備をしよう」

ロメルスは言われた通り食事の準備を始めたが少し元気がなかった。しかし、ご飯を食べている時には普段の調子に戻り、嬉々として今日あったことなどをアウスに話していた。

 夜遅い時間になり2人は眠る時間になった。いつもロメルスは眠る前にアウスにイロの王の話を聞いていた。今日も話をしてもらうようにアウスに頼むとアウスまたかという顔に呆れ顔になりながらロメルスに聞いた。

「毎晩のように同じ話をしてるじゃないか。なんでそんなに聞きたがるんだい?」

するとロメルスが嬉々としながら言った。

「だって、イロの王様って頭も良くてたくさんの人から尊敬されてたんだろ。それってすげーじゃん。俺の憧れの人なんだよ。お願い、今日も話して!」

アウスはやれやれという顔になりながらロメルスに話し始めた。


 昔、人は火を手に入れたいとき時は木を切り、水を使いたいなら、水源を確保していたんだ。そんな時代が100年近く続いていた時ヨトュンヘルム王という王様がこの国の3代目の王として、現れた。彼はたいへん頭がよく、性格も温厚で民からの信頼も厚かった。しかし、ヨトュンヘルム王は民がエネルギーを手に入れるのをもっと楽にしてあげたいと思い、国中の学者を集め、城の中で長い間考えられたんだ。そして、イロを発見したんだ。また、イロトリという機械を発明した。イロトリは普段は見えないイロを物体にすることができる機械なんだ。今は、イロトリはイロの門に守られている。ところで、ヨトュンヘルム王には、アイズ姫という王妃と2人の子供がいたんだ。アイズ姫は元々、農民の娘であったが大変頭も良く、美しかったらしいんだ。しかし、王宮に入ってからは、あまり民の前に出てくることがなく毎日自室にこもって何かの実験をしていており、実は魔女ではないかと民から恐れられていたんだ。しかし、ヨトュンヘルム王がイロがガイル国のエネルギー源として普及して来た時、アイズ姫がイロトリを破壊してしまったんだ。理由は今でも不明のままだが一説ではヨトュンヘルム王を貶めようとしたと言われている。しかしアイズ姫はその後の居場所は分からくなってしまったんだ。けれど噂ではイロナシという場所に送られたと言われている。そして、アイズ姫がいなくなるとヨトュンヘルム王はイロトリを復活させ、色を使ってガイル国を大きく進歩そしてヨトュンヘルム王の亡き後、イロの王と呼ばれたんだ


 するとロメルスが目を輝かせながら言った。

「ヨトュンヘルム王ってほんとにすげーな。俺もヨトュンヘルム王みたいになれるかな?」

アウスはロメルスの頭を撫でながら言った。

「あぁ、ロメルスならヨトュンヘルム王よりもすばらしい人になれるよ。お前はすごく優しい子供だからね」

 しかし、ロメルスを撫でている手が止まった。「おじいちゃん?」とロメルスが聞くと急にアウスが「うっ」と言って、胸の辺りを押さえうずくまった。

「じいちゃん胸が痛いの?!」

ロメルスが大声でアウスに声をかけると、アウスがロメルスの肩を掴みながら息絶え絶えに言った。

「ロメルス……お前は優しい子だ。……だから誰かのた……めに動きなさい。おじいちゃんとの約……束……」

そう言うとアウスは布団に倒れ息を引き取った。しばらくロメルスは涙を流しながらアウスを眺めていた。

「……じいちゃん、じいちゃん……何か言ってくれよ」

 ロメルスがアウスの肩を揺さぶりながら、言うがアウスは黙ったままだった。

町の郊外に1人悲しい声が響いた。

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