想ひ出

宙恋

高校で知り合った君と別れて五ヶ月が経ったある夢の話。


僕は昔通っていた田舎の中学校の体育館の二階で清掃をしていた。


掃除が終わり、外へ遊びに行こうと一階に降り、大きな鉄の扉から体育館を出た。


三段ほどの石段を降りてふと顔を上げると、君の変わらない笑顔がそこにあった。


君がいるはずのない場所にいたせいで少し驚いたが、挨拶を済ませて話し始めると、君はさっき僕が降りた石段に腰かけた。


久々の会話ということもあって少し心が踊った。


校庭からの優しい風が、欠伸をするように大きく開いた体育館の口へ吸い込まれていくのを、僕たちは感じていた。


風になびく綺麗な髪。


ポカポカという言葉が良く似合う陽気を肌で感じる昼下がりは、とても心地よかった。


たわいもない会話をしながら、付き合っていた頃の思い出に浸っている僕は、この時間が永遠に続けばいいとさえ思った。


空を見上げると、田舎の広く澄み渡った青空には、白い羊のような雲がポツンと一つ。


その雲はまるで僕の青い心の中に、突如現れた君のようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

想ひ出 宙恋 @TkhtSr

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る