二人の意見

「好きな人にされたら、嬉しいこと……。ですか?」


翌日。

ジョーカーに行く前に、笹倉と九条に、オカルト研究部の部室へ来てもらった。


「なんか……。恥ずかしいです。言いたくないなぁ」

「頼むよ笹倉。犀川のためなんだ……」

「う~ん……。でも、柚、男の人を好きになったこと、まだ一回も無いので、本当にわからないんです」

「そうなのか? 意外だな……」


こんなに可愛いのに……。


「あっ、女の子のことを好きになったこともないですよ?」

「わかってるよ。えっと、そうだな……。じゃあ、こんな人だったら、好きになるかもしれない。とかはないか?」

「そうですね……。優しくて、かっこよくて、勉強ができて、運動もできて……。柚の言うこと、何でも聞いてくれる人……かな。えへへ」


えへへ。

……では、誤魔化されないほど、結構な要求をしてきたな。


「……九条はどうだ?」

「ちょっと、武藤先輩!? 柚、ちゃんと答えたのに!」

「笹倉は、まだ一年生だもんな。うん。これからだよ」

「な~んかムカつくぅ~!」


頬を膨らませている笹倉は、一旦スルーさせてもらうとして。


「私は……。なんだろ。考えたこと、無いけど」

「おいおい……。九条もか?」

「だけど、私はちゃんと、異性を好きになったこと、あるから」

「そうか。じゃあ是非……」

「なんだろうな……。隣にいてくれたら、それで良いって思っちゃうかも」

「可愛いですね……」

「そうだな……」

「なっ、なんなの?」


九条の顔が、真っ赤になった。

意外と乙女チックなところ、あるじゃないか。


「……私さ、うっかり、直美が怒ってるところ、武藤と一緒に見ちゃったけど。なんか、普通のことを試しても、無理だと思うよ。あの子、頑固だし」

「そうだよな……」


一応、昨日の夜、嬉波と一緒に、いくつか策は考えたが……。

正直、手ごたえは感じない。

一つや二つくらいは、他の案も取り入れたかった。


「でも、それだけ真剣に、武藤のことで悩んでるってことは……。逆に言うと、チャンスがあるってことなんじゃないの?」

「……そうか?」

「うん。だって、直美って普段、誰に対しても、ドライじゃん? それが、武藤一人のせいで、これだけ混乱してるわけだから……。ね? もう、強引にキスとかしたら?」

「な、何言ってるんですか! 明美先輩!」

「そうだぞ九条! エチエチはいけません!」

「直美みたいなこと言わないでよ……」


九条が、ため息をついた。


「……とにかく、粘ることじゃない。どんだけ作戦考えても、手を握られて失神したら、意味ないじゃん」

「……そうなんだよな」


結局、現状の犀川の攻撃に、耐えられないことには、何も始まらない。


「あのさ」

「ん? どうした九条」

「私も行くよ」

「えっ」

「これでも、仲良かった方だし……。私が間に入れば、失神させられることもないでしょ?」

「確かに……。でも、良いのか? ジョーカーの方は」

「柚ちゃん。大丈夫だよね?」

「もちろんです! 任せてください!」

「笹倉……。ありがとう」


こうして、今日は九条と一緒に、犀川を説得することになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る