嫉妬……?

今日は、一年生の方が、早く授業が終わる日なので、俺は一足遅れて、ジョーカーに向かうことになる。


その前に……。

……断られると思うけど。

土曜日のイベントに、犀川を誘ってみよう。


俺は、オカルト研究部の部室に向かった。


「おう。犀川」

「ん」


ん。


だけか……。

なんか最近、放課後はバイトに行くこともあってか、犀川と長い会話をしていない気がする。


「あ」

「あの」


話しかけようとしたら、犀川の方から話しかけてきた。

珍しいな……。


「えっと、そっちから、どうぞ」

「うん。こっち来て」


これまた珍しい。

いつもは、近づくなオーラ全開で、参考書を読んでるのに。


「経過報告、しようかなって」

「あぁうん……。どんな感じだ?」

「お医者さんが、褒めてくれた。すごくメンタルが安定してるって。このままいけば……。年内には、普通の生活に戻れるかもしれない」

「本当か? すごいな……」


犀川が、少し嬉しそうに、頬を緩ませた。

相変わらず、素直じゃない。


「このエチエチな体は、元には戻らないけどね」

「お、おう……。それはまぁ、良いんじゃないか?」

「……変態」

「うっ……。い、いやだから、俺は元から、犀川のこと」

「はい、それ以上は無し」

「……」


……まぁ、もちろん、大きいに越したことはないけどな。


「それで、お医者さんから、段階を踏んで、色々実験したほうがいいよって言われて」

「実験?」

「ほら。こないだ……。武藤くんが、エチエチな気分になるかどうか、そういう服を着て、試したでしょ」

「あぁ……」

「あんなのは、もうしないけど……。その、人前に出て、異性の反応がどうなのかなっていうのは、徐々にだけど、確かめてみたいと思ってる」

「そうだな。うん。もし俺で良ければ、いつでも付き合うよ」

「じゃあ、次の土曜日は?」

「あっ……」


俺の顔を見て。

犀川が、落胆したような表情になってしまった。


「えっと、次の土曜日はイベントで……。あぁ、というか、今月はちょっと、土日はバイトが忙しくて」

「最近、お友達増えたもんね」

「……そんな皮肉っぽい言い方しなくても」

「笹倉さんとか、明美とか……。バイト、楽しい? 私と話すよりも」

「犀川……。これには、理由があって」

「いいよ。別に。お母さんと出かけるから」

「……すまん」


サプライズのことを、言うわけにはいかない。

心苦しいが……。

ここは、バイトを優先させてもらう。


「ほら。早くバイト行ったら?」

「おう……。あ、あのさ。犀川。もし良かったら、土曜日のイベント――」

「絶対行かない」


睨まれてしまった……。


俺は、犀川をこれ以上怒らせないように、静かに退室し、ジョーカーへと向かった。

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