イベントの計画

「イベント……ですか?」

「そうそう!」


とある日の閉店後。

モモ先輩が、良い案を思いついたと言って、ジョーカーにやって来た。


「せっかく柚ちゃんがいるんだしさ。明美ちゃんも、歩夢も、コスプレしたらいいじゃん!」

「え~……。そういうイベントですか? 私はパスで」

「なんで!? 明美ちゃん、スタイル良いし……。ヴァンパイアのコスプレとか、良さそうじゃん!」


撫でまわすように、モモ先輩が、九条の体を見ている。


「だいたい、私は表じゃなくて、裏の仕事……」

「いいや。娘の晴れ舞台、私も是非見たいなぁ」


武三さんが、ノリノリになっている。


「でしょう? ほら明美ちゃん。お父さんに、良いところ見せたいよね?」

「良いところって……。お父さん、正気なの?」

「……本気と書いて、マジだね」

「はぁ……」

「でもでも! みんなでコスプレしたら、楽しそうじゃないですか! ね?」


笹倉に、そう言われてしまったが……。

正直、あんまり気が進まなかった。


ただでさえ、メタモル武藤とか言って、イジられてるのに。

コスプレイベントなんて開かれた日には、学校でどんな扱いされるか、わからないからなぁ……。


いや、見方を変えれば、人気者になった! なんて、思えるかもしれないけど。


「今度の土曜日! どう? フミちゃんも絶対連れてくるから!」

「私は賛成だよ」

「柚も賛成です!」

「……武藤は?」

「俺は……。イベントを開くこと自体は、この店を盛り上げるためにも、あって良いと思うけど……。俺自身がコスプレするのは、あんまりというか」

「そんなこと言って~。私、知ってるよ? 歩夢がすっごい中二病だったってこと!」


モモ先輩が、いたずらっぽい笑みを浮かべている。

おいおいまさか……。


「例えば~」

「だぁ~わかった! わかりました! 俺も賛成で!」


……俺、モモ先輩に、中二病だったことなんて、話したことあったかな。

多分、嬉波が勝手に言いふらしたんだろう。

帰ったら、説教してやらなければ。


……とにかく、数々の黒歴史を、披露されるわけにはいかない。

仕方なく、俺は、その案を受け入れることにした。


「反対してるの、私だけか……。じゃあ、いいですよ。やりましょう。けど、表には出ませんから。それが条件です」

「わかったわかった。じゃあ、次の土曜日ね?」

「楽しみだなぁ~。えっと、明美先輩がヴァンパイアなんですよね?」

「決まりなの?」

「せっかくだから、コンセプトを決めちゃおうか! えっと、ヴァンパイアが明美ちゃんで……。歩夢は魔王! そんで、柚ちゃんが堕天使で、私がデーモン! フミちゃんはそうだなぁ。雪女とか?」

「すごいダークな感じになってますけど……」


ほとんどお化け屋敷に近い。


「柚、実は、羽の色変えられるんです! ほら!」


笹倉の背中の羽が、黒色になった。


「どうです? 漆黒の堕天使……!」

「いいねいいね! これはもう決まりだ! 他の付随するイベントについても、色々考えておくから! また連絡するよ!」

「なんか、とんとん拍子で進んでくね……」

「モモ先輩は、そういう人だからな……」


俺と九条は、同時にため息をついた。

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