いきなり成果が……。

「あ~来た来た。二人とも、早く着替えて?」


店に入ると……。

なんと、二組ほど、お客さんが入っていた。


うちの学校の制服を着ている……。

昨日、撮った写真を、早速投稿したが。

まさか、こんなに早く、成果が出るとは。


「すまん九条。遅くなって」

「いや全然。さっきあの子たちに話聞いた感じ、もうちょい増えそうだから、ちょうど良かったよ」

「本当ですか……?」

「うん。ほら早く」

「は、はい!」


笹倉が、先に更衣室へ向かった。

俺はその間に、武三さんに挨拶をすることに。


「こんにちは武三さん。すいません遅くなって」

「あぁ武藤くん! いやいや、嬉しい限りだよ! 昨日投稿した写真が、もう那古野森学園の生徒たちに広まっていてね……。こんなことなら、もっと早く手を打っておけば良かった」


武三さんの渋い笑顔を見ると、嬉しくなってくる。


「お待たせしました! 先輩、どうぞ!」

「おう」


笹倉と入れ替わりで、更衣室へ。


すぐに着替えて、表に出た。


「私はお父さんを手伝ってくるから、あと任せたよ?」

「わかった!」

「……あと、笹倉さんには、はしゃぎすぎないように伝えてね」

「……了解」


九条が、裏へ向かった。

笹倉は……。


「わぁすご~い! ちょっと触ってもいい?」

「いいですよ! 柚の自慢の羽根です!」

「やぁ~! 柔らかい!」

「ふふふ!」


……もう手遅れだった。

二人の女子生徒に、羽根を見せびらかしている。

まぁ、同じ学校の生徒だし、ある程度は良いと思うけど。


「あっ、店員さ~ん! お水ちょうだ~い!」

「は、はい!」


俺はすぐに、水を持って、女子生徒の元へ向かった。


「どうぞ」

「って、あれ……? メタモル武藤じゃん」

「……はい?」

「わぁ本当だ! エプロン似合ってる!」


メタモル武藤……?


「メタモル武藤って、なんですか?」


俺の代わりに、笹倉が尋ねた。


「最近さ、武藤、髪切ったじゃん? それめっちゃ評判良いよ? 特に――」

「あ~ダメダメ! それ以上は言っちゃダメ!」


女子生徒Aが、Bの口を塞いだ。


「えっと、髪の毛を切ったから、メタモル武藤ってことですか?」

「そうそう! メタモルフォーゼ武藤!」

「なるほど! 柚もそうやって呼んでいいですか?」

「やめてくれよ……」


なんか、お笑い芸人の芸名みたいで、嫌なんだよな……。


「じゃあメタモル武藤! 水汲んで?」

「かしこまりました」

「かしこまり……。あはは! いいよ敬語じゃなくても! 私たち、同級生じゃん!」

「そうですか……?」


正直、見覚えが無い。

交友関係、死んでるからな。


むしろなんで、そっちが知ってるんだろう。


「私は、岸本凛きしもとりん! よろしく!」

「岸本の正面に座る私は、戸柱恋とばしられん! よろしく!」


独特な自己紹介だな……。


「みんなから、リンレンコンビって呼ばれてるんだ!」

「違う違う! レンリンコンビ! だって私の方がお姉さんだもん」

「誕生日の話? 三日しか変わらないじゃん! リンレンの方が語呂が良いって!」

「なにぃ? じゃあメタモル武藤に決めてもらおう!」

「えっ……。俺?」

「そう! 決めて!」

「いや俺は……」

「お~い。料理運んでよ~」

「す、すまん! 今行く!」


九条に呼び出され、俺は慌てて、裏に向かった。


「もう……。同級生だからって、話込んでたら、ダメだから」

「すまん……」

「わかればよろしい。ほら、それ運んで?」

「おう」

「……二人、なんか言ってた?」

「え?」

「私のこと。それか、武藤のこと」

「あ~。メタモル武藤ってあだ名がついてるって、さっき教えてもらったな」

「それだけ?」

「それだけだな」

「よし。じゃあ早く、持っててあげて」


俺の肩を叩き、九条は奥へ引っ込んで行った。


なんだろう。最近の九条……。

やっぱり、何か隠してるよな。


気になりつつも、俺は料理を、二人のテーブルへと運んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る