作戦会議
「何か、良い案が浮かんだ人は、是非発言してくれるかな」
「はいっ!」
「おっ、早いね。笹倉くん、どうぞ」
「看板を、もっと可愛い感じにした方がいいと思います!」
「あ~! それ賛成!」
笹倉の意見に、モモ先輩が同意した。
……一方、微妙な顔をしているのは、文月先生と、九条。
「ですが、通り沿いではないですし……。今の渋めの看板の方が、良い気もしますが」
「そもそも看板なんて、代えるお金ないと思う」
見事に、二対二の構図が出来上がっているな。
これは……。結構長引きそうだぞ。
「はい」
「文月先生。どうぞ」
「そうですね……。店内に、BGMをかけるのはどうでしょうか。無音だと、なんだか落ち着きません。リピーターが発生し辛いのでは?」
「あ、それは私も賛成。何にも音楽が流れてないと、働いてても気分乗らないし」
「でも、かけるなら、ポップな曲がいいです!」
「それそれ! 今流行りの曲、ガンガンかけちゃお?」
「いえ、それだと喫茶店の雰囲気に合わないと思います」
「そうだね。落ち着かないんじゃない?」
……うん。
これは、平行線を辿ってしまいそうだな。
「と、とりあえず……。すぐに改善できるものから、初めていこうか」
武三さんが、汗を拭きながら言った。
「すぐに……。それなら、SNSで宣伝とか、どう?」
「それいい! イン○タとかで、バチバチにかっこいい写真撮って、投稿した方が良いと思う!」
「そうですね! なんなら看板娘の私も一緒に……」
「おっ、これは結構……、みんな同意かな?」
「……どうせなら、ここは学校が近いですし、SNSを利用して、学生限定の割引など初めてみてはいかがでしょうか」
「なるほど……! 賢い! さすがフミちゃん!」
「ふふっ……」
文月先生が、珍しくドヤ顔をしている。
俺も、結構良い案だと思った。
……唯一、九条は、微妙な表情をしているが。
「九条、何か引っかかるところがあるのか?」
「いや……。働いてる時に、同じ学校の生徒に会うって、あんまなんか……」
「あぁ……」
「私は全然、平気ですけどね! むしろ、この羽をみんなに見てもらいたいです!」
俺みたいに、友達のいないやつとか。
笹倉みたいに、誰に対しても底抜けに明るい奴とかは、平気だけど。
……九条みたいに、クラスの中心で、色々あれこれと手を回してるタイプは、確かに面倒かもな。
「それなら、明美は私と一緒に、裏で料理を手伝ってくれればいいさ」
「……なるほどね?」
「お客さんが増えれば、私一人だと、手が回らなくなる可能性もあるからね」
「うん……。なら、いいよ?」
「よ~し! 決まりましたね! 今後の方針が!」
「私も、友達にドンドンオススメするよ!」
「ありがとうございます!」
「教師が、昼休みにここを訪れるもの、良いかもしれませんね……。私が宣伝しておきます」
「それはありがたい……」
こうして、ある程度の方針は決まったが。
なんとなく、九条がしっくり来ていないのが、気になった。
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