最初からエチエチでした

「……は?」


犀川の顔が、真っ赤になった。

そして、俺は渾身のドヤ顔をキメてみせる。


「はっはっは。驚いたか犀川。お前は気が付いていなかったようだけどな。堅物委員長っていうのは、実はエロいっていう事実が、もう世界中にバレちまってるんだよ」

「何言って……」

「実際、犀川はサキュバスを知っていたよな? やっぱり本当はムッツリスケベなんだろ。自分がエッチなことに興味があることに対して、罪悪感を抱いているから、男子生徒のエロを規制しようとした……。そうとしか考えられない!」

「違う! 私はそんな、エチエチな女の子じゃない!」

「いいや! 言い訳は無駄だぞ犀川。あの本棚……。やけに怪しいな」

「ほ、本棚が……何?」


犀川がベッドから立ち上がり、本棚の前に立った。

その行動……。もはや、自首と言ってもいいようなものだぞ。犀川。


「全ての本に、書店のカバーがしてあるんだよ。これだけ本を読む読書家なら、普通、見栄えを気にして、背表紙が見えるように入れるはずなのに」

「そんなの、個人の勝手でしょ!?」

「いいや! じゃあ試しに、その少しだけサイズの大きい本を見せてみろよ! 明らかに成人向け漫画のサイズしてるぞ! 違うか!?」

「……出てって! 変態!」

「ほ~ら図星じゃないか! 変態はどっちだ! お前は、魔物症候群になる前から、もう充分エロエロだったんだよ! そして、俺はそれを見抜いていたから、お前が人のエロを規制するたびに、あぁこいつ本当はエッチな癖になぁ……。って、エッチな目で見てたぞ!」


耳まで真っ赤になった犀川が。

ゆっくりと、こちらに近づいてくる。


「さ、犀川?」

「……そうだよ」

「え?」

「私、すごくエチエチだから」

「……あ、うん」


いや、認められるとこっちが恥ずかしいんだけど。


「その、まぁなんだ。だからさ。別に今そういう姿になって、誰にでもわかりやすいエロになったけど、元からお前をエロい目で見てる人はいたから、別に気にすることなんて無いんだぞ~っていう話を、したかっただけで……」

「うるさい」


犀川は、すぐ目の前まで迫ってきた。


「あ、あの。犀川さん?」

「キモいから、出てってよ」

「えっ」

「出て行かないの?」

「ま、まだ話は終わって――」

「出て行かないなら……。こうしてやる!」


そう言うと、犀川は……。


思いっきり、俺を、抱きしめた。


「~~!?」


犀川の匂い。

犀川の温もり。

犀川に包まれながら、脳みそが震えるほどの多幸感を押し付けられて。


俺は……、失神してしまった。

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