第386話 交渉
倒れた女はむつの熱狂的ファンで以前よりムツをストーキングしており、接近禁止を命じられていたのだが、それを無視して近付いてきており、今日ムツを自分だけの物にしようと強行に及ぶところだったのだが、シモはその殺気に反応して倒したのだった。
あと一歩でムツは刺されるところだったのだ。
「ありがとう、シモちゃんのおかげで助かったよ。」
「いいのよ、シモは約束を守るのよ。」
「親御さんにもお礼を言いたいのだが、何処にいるのかい?」
「親御さん・・・おとうさんとおかあさんはここにいないのよ・・・」
シモの表情が一気に暗くなったので、ムツも慌てだす。
きっと親御さんに複雑な事情があるのだと。
「シモちゃんごめんね、それじゃ誰と一緒に来たのかな?」
「リョウ兄とアズ姉なのよ。」
シモは目に溜まった涙を袖で拭い、リョウとアズサを指さした。
「ちょっといいかな?」
ムツは俺に話しかけてきた。
「はい?なんでしょう?」
ヒトミと言い争いを止めてムツを見る。
「君がシモちゃんの保護者でいいのかな?」
「ええ、シモちゃんの保護者ですが、何かありましたか?」
俺はヒトミとの言い争いに夢中でシモが倒した女の事に気付いていなかった。
「いや、私はシモちゃんに命を救われたからね、保護者にもお礼を言わないといけないと思って来たんだ。
ありがとう。シモちゃんのおかげだよ。」
ムツの感謝の言葉に戸惑いながら、シモに聞くことにする。
「えーと、シモちゃん何をしたのかな?」
「殺気を持って刃物をもった女を蹴ったのよ。
ちゃんと手加減したのよ。
頭はとれてなかったのよ。」
シモは誇らしそうに言う。
「良くできたね、この国ではすぐにクビを斬ってはいけないからね。」
「うにゅ?でも、おじいちゃんは良く斬り落とすのよ?」
シモはコテッとクビをかしげる。
「爺さんはもうダメなんだよ、教えた所で理解出来ないから。
でも、シモちゃんは偉い子だからちゃんとわかるよね。」
「シモはおとうさんの言いつけ通り、リョウ兄の言うことを聞くのよ。」
「いい子だね。」
俺はシモの頭を撫でる。
主演の二人が俺の所に来ていることでプロデューサーの山本も俺の存在に気付いてこちらにやって来た。
「リョウくんじゃないか!リナちゃんも来てるね!そうか出演してくれるんだね!」
「違います!」
「いいから、出演してくれるよね?」
山本さんの目が血走っている。
「怖いですよ、山本さん。」
「折角の視聴率アップの機会を逃すものか・・・ヒトミさんもムツさんもいいですか?」
「私は構わないわ、そもそもリョウはもっと関わるべきよ。」
「私も構わない、ただ、この子も出して貰えないか?」
ムツはシモを指差す。
「これはまた美少女を・・・リョウくんは何処で見つけて来るのかい?」
「この子は友達の子供ですよ、ちょっと訳があって世話をしているのです。」
「そうか、シモちゃんはテレビに出てみたいかい?」
「うにゃ?テレビに出れるのよ?」
「出れるよ、リョウくんと一緒にテレビに映るんだ、きっと楽しいよ。」
「リョウ兄、シモ、テレビの中に入るのよ!すごいのよ!」
シモははしゃいでいる。
「仕方ないでるか・・・」
こうして俺達の出演も決まるのだった。
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