第385話 撮影合間の雑談

「ヒトミ元気か?」

「私は元気よ、それよりその肩に乗せてる子は誰?」

「うにゅ?シモなのよ。」

「そう、シモちゃんって言うんだ、リョウとはどういう関係なのかな?」

「リョウ兄との関係・・・おとうさんの友達でおじいちゃんの孫なのよ!」

「おとうさんの友達でおじいちゃんの孫?それって親族ってこと?」

ヒトミは首を傾げる。


「あー違う違う、この子はヨシノブが育てている子、訳あって今預かっているんだ、それで俺の爺ちゃんが気に入っているって話だよ。」

「リョウ、嘘を言うのは駄目よ、ヨシノブはこの前亡くなったじゃない。

あっ、もしかして、亡くなったヨシノブの子供を預かることになったの?」

「おとうさんは死んでないのよ!」

「ご、ごめんなさいね、お姉さんが悪かったわ。そうね、あなたの中では生きてるのね。」

ヒトミは勘違いから、シモがヨシノブの死を受け入れられないのだと思っていた。


「いや、違うから・・・」

俺は説明しても理解してもらえないだろうなと思いつつもヒトミに説明するのだった。

説明中、シモは飽きたのか、俺の肩から飛び降りていた。


「ふーん、異世界ねぇ、そういえばそんなゴシップがあったような・・・」

「そう、それだよ。」

「それでその子を連れて観光中ということ?」

「そうだよ、日本の良さをわかってもらおうとね。」

俺と話しているとプロデューサーの山本から声がかかる。


「ヒトミさん、ムツさんの準備が出来ました。撮影再開しまーす。」

「はーい、今行きますね。」


「忙しそうだな、俺はそろそろ行くよ。」

「待ちなさい、少しは手伝って行きなさい。」

「いや、俺は観光に来てるだけだし。」

「私に仕事を任せたままでしょ、たまには来なさい。」

「しかしだなぁ・・・」

俺とヒトミが言い争っている中、シモは・・・


「おじさんは何をしてるのよ?」

今回のゲスト、ムツに声をかけにいっていた。

どうやらみんなに騒がれてカメラを向けられているムツに興味をもったようだった。

「おや、お嬢ちゃん、私を知らないのかね?」

「知らないのよ?初めて会うのに知っている方が変なのよ?」

シモはクビをかしげる。


ムツはハリウッドデビューも果たしている、大物俳優だった。

現在の日本で知らない者はいないと彼自身思っていたのだが・・・

「これは私もまだまだということだね、私はムツ、役者をやっているよ。」

「ムツさんなのよ、シモはシモなのよ、剣士であり、スナイパーなのよ。」

「おやおや、可愛い剣士でスナイパーなんだね。」

ムツは子供の冗談だと思い笑って流す。


「シモは強いのよ。」

「そうかい、なら私も守ってもらおうかな?」

本来なら子供と話さず撮影再開すべきなのだが、共演のヒトミが知り合いの男性と話しているようだった。

見る限り、仲良さそうに見えたので若者の楽しみを邪魔するまいと、

ムツもシモを話し相手に時間を潰そうとしていたが・・・


「ちょっとならいいのよ。」

そう言うと、シモはムツの近くに寄って来ていた一人の女の顎に蹴りを入れ、意識をかる。


「お嬢ちゃんは何をして・・・」


シモの暴挙に周囲が騒然となる中、倒れた女のカバンの中からナイフが出ている事が判明して更に騒ぎが大きくなる。

「悪者は成敗なのよ!」

シモは誇らしげに胸を張っていた。

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