第379話 シモと手合わせ

「さて、シモちゃん、爺さんがいう力を見せてもらえるかな?」

俺はシモの実力が気になり、手合わせをお願いする。


シモもヨシノブと話して余裕ができたのか、既に泣き止み、表面上は普通に見える。

「わかったのよ、でも、おとうさんの友達を傷つけたらいけないから、手加減するのよ。」

「あらら・・・一応俺もそこそこはできるんだけど?」

俺は子供の虚勢と思っていたが・・・


「リョウ、本気でやらんとケガをするぞ。」

爺さんが開始寸前でそんな事を言ってくる。

「えっ?」

「いくのよ。」

シモが一気に間合いを詰めてくる。

「くっ!はやっ!」

「桐谷流、奥義、椿なのよ!」

シモが瞬速の居合斬りを見せてくる。

「それ、うちの奥義!」

俺は何とか防ぐ。


「からの〜奥義、楓なのよ!」

シモが旋回勢いのまま、旋回して奥義をつなげる。

「まじか!」

俺は少し下がり、旋回半径から回避するも・・・

「もらったのよ!奥義紅葉なのよ。」

横旋回からの縦旋回に変わり、俺の頭に木刀が迫る。


「リョウ!」

アズサの悲鳴に似た声が響くが・・・

俺は何とか上段に構えた木刀を斜めにして、シモの上段斬りを受け流す事が出来た。


「や、やばかった・・・」

俺は冷や汗が止まらない。


「失敗したのよ・・・」

シモはしょんぼり落ち込む。

「おお、可哀想に、リョウよ何故受けてやらん!」

アキラはシモを慰めるために俺を犠牲にするつもりだ。

「爺さん、あんなの受けたら死ぬだろうが!」


「こんな幼子の一撃で死ぬとは修行が足らん。」

「いやいや、普通死ぬだろ?何だよ今の早さと、うちの奥義は?」

「ワシが教えた。」

「一子相伝はどこいった!」

「これ程の才能を埋もれさすのはもったいないでは無いか。それに不甲斐ない孫は何時までたっても暗示無しに奥義を使えないと来ている。

もっと励まぬか!」

「いやいや、普通此処までにならないだろ?」

「才能とは怖いものじゃ、加減してあれ程とはワシも思わんかったが。」

「加減してたの?」


「してるのよ、おとうさんの友達に全力は出せないのよ、ちゃんと寸止めできる速度でやってたのよ。」

「・・・まいった、俺の負けだ。」

俺は負けを認める。

「やったのよ!勝ったのよ♪」

シモは嬉しそうに飛び跳ねる。


「幼子に負けるとは不甲斐ない、修行のやり直しだな。」

「爺さん、あれ無理、早すぎるし、威力も幼女とは思えない、一体何をすればあんなふうになるんだよ。」

「向こうの世界の人間は魔力の素質が高いからのぅ、それにあの子はたぶん何処かの神の血を引いておる、それが色濃く出ているのじゃ。」

「ヨシノブの奴、なんていう子を育てているんだ、というかヨシノブより強いよな?」

俺の言葉を聞いていたのかシモが駆けつけて来て。


「おとうさんの方が強いのよ。」

「いやいや、ヨシノブはそんなに強くないだろ?」

「だって、シモは一発も当てれないのよ。」

アキラは呆れた顔をしている。

「爺ちゃんどういうこと?」

「簡単な事じゃ、シモちゃんはヨシノブ相手には戦えんだけじゃ、訓練してても甘える事しかせんからのぅ。」

「おとうさんは凄いのよ、前に立つとギューってして欲しくなるのよ。」

「あー、ヨシノブ慕われてる訳ね、よし、今度からかってやろう。」

俺はヨシノブをからかう事を心に決めたが・・・


「その前に特訓じゃ、幼子に負けるその情けない武を鍛え直してやる!」

爺さんの地獄の訓練が先に来るのであった・・・

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