第378話 親友の娘
調べごとをしている所に爺さんから電話がかかってくる。
「ワシじゃ、リョウ、富士山まで迎えを寄越せ。」
「爺ちゃん!異世界にいたんじゃ!」
「うるさい、後で説明してやるからまずは迎えに来い。」
「わ、わかった。」
電話が切れてからすぐに手配をする。
「アズちゃん、爺さんが帰って来たみたい、富士山にすぐに迎えを出してもらえる?」
「えっ?アキラさん異世界にいたのでは?」
「わからないけど、帰って来たみたい。ただ機嫌が悪そうだったから、なるべく早く迎えを出して。」
「それは危険です、すぐに迎えを出しますね。」
そして、近隣の支部に迎えを出し、夕方には爺ちゃんがやって来る、一人の子供を連れて。
「爺ちゃん、隣の子供は?」
「ワシの孫じゃ。」
俺は首を傾げる、こんな親戚はいなかったはず・・・
「違うよね?誰の子供?」
「ヨシノブの子供じゃ、早く連絡をとらんか!」
「い、いや、今聞いたよね、でも、すぐに電話してみるよ。」
俺はヨシノブにテレビ電話をするが電波の都合ですぐには繋がらない。
その間、子供に質問する。
「えーと、君の名前は?」
「シモなのよ・・・」
「そうか、シモちゃんか、お兄さんはリョウといってね、そこの爺さんの孫で、ヨシノブの親友何だよ。」
「・・・思い出したのよ、この前、おとうさんにポーションねだってた人なのよ。」
「そ、その覚え方は微妙だけど、まあそうだよ。」
「おとうさんのお友達ということはわかったのよ、話している時のおとうさん楽しそうだったのよ。」
「まあ、付き合い長いからね。だから、安心してね。困ったことがあったら俺か、こっちのアズサに言ってもらえるかな?」
「リョウの妻のアズサです。主人のお友達の娘さんなら、自宅と思って遠慮なくすごしてくれていいのよ。」
「自宅・・・シモお家に帰りたい・・・」
シモの瞳に涙が溜まる。
「シモちゃん、ごめんなさい、私が悪いわね、大丈夫よ、リョウとアキラさんが必ず何とかしてくれるから。」
泣きそうなシモにアズサは慌てて慰める。
そんな中で電話が繋がるのだった。
繋がった瞬間、シモが叫びだす。
「おとうさん!シモなのよ!」
シモは半べそをかきながら電話に出ていた。
「シモ大丈夫かい?」
「大丈夫じゃないのよ、寂しいのよ。
お家に帰りたいのよ。」
「少しだけ我慢してくれよ、何とかするから。」
ヨシノブはシモの横にいる俺に話しかけてきた。
その様子からあまり余裕が無いように感じる。
「リョウ、世界を渡る方法は無いのか!」
「落ち着けヨシノブ、今調査中だ、それよりシモちゃんは俺達が保護をするから一先ず安心してくれよ。」
「ああ、ありがとう、それとすまない、少し取り乱していたよ。」
「気にするな、お前の娘なら俺の娘も同然だ、大切にするさ。
必ず、シモちゃんと爺さんを送り届ける。」
「ちゃんとシモだけを帰してくれ。」
「任せろ!シモちゃんはともかく爺さんは確実に帰す!」
俺とヨシノブは電話ごしに睨み合う。
すると横からアズサが叱ってくる。
「リョウ、こんな時に冗談を言わないの、始めましてヨシノブさん、私はリョウの妻のアズサと申します。」
「あなたがアズサさんですか、シモとリョウがお世話になってます。」
「リョウの世話は当然ですし、シモちゃんもいい子にしてますので安心してください。ねっ?」
「うん、シモいい子にしてるのよ。」
アズサはシモの頭を撫でる。
「シモはえらいな、リョウ達は信用出来るから帰れるまでいい子にしてるんだぞ。」
「うん。」
シモは寂しいのを我慢して、笑顔をヨシノブに見せていた。
それから時間の限りシモはヨシノブと話をしている。
その間、俺は爺さんから事情を聞いていた。
「なるほど、じゃあ何としても家に帰してあげないとね。」
「うむ、それもあるが、折角じゃからのぅ、リョウよ、シモちゃんに針をうってくれんか?」
「えっ?」
「お前の鍼治療なら気脈の流れを良くできるであろう、シモちゃんの魔力向上になるはずじゃ。」
「ちょ、ちょっと爺さん、あの子に入れ込みすぎじゃないか?」
「見よ、あの子は才能に溢れておる。桐谷流を継げる程にな。
あの子がお前と歳が近ければ嫁入りも考えたわい。」
「流石に歳が離れてるよね。」
「残念じゃわい。」
「まあ、ヨシノブの娘だしね、出来ることはちゃんとやるよ。」
こうしてシモの強化が始まるのだった・・・
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