第356話 帰宅後のミサト

ミサトは家に帰ってからも上機嫌だった。

「あら、ミサト機嫌がいいわね、試合に勝っただけではないよね?何かあったの?」

母親のマリナがミサトに聞いてくる。

「あのね、今日の試合にリョウさんが観戦に来ていたの!」

「リョウって、ドイツ代表の?」

ミサトの兄ツトムが反応する。

「そうよ、お兄ちゃん!ドイツ代表のリョウさん。見てこれ、サインも貰ったの!」

ミサトはユニフォームに貰ったサインを見せる。

「マジか!俺も行けば良かった!」

ツトムは悔しそうにしている。

ツトムは今日、練習が厳しく疲れていた為に行くのをやめていた。


「それだけじゃないの!週末、教えてくれるの!」

ミサトは高いテンションのまま、ツトムに伝える。

「へっ?教えてくれるって、リョウさんがお前に?」

「私だけじゃないよ、私のチームメイトにも教えてくれるって!」


「なんで!!」

ツトムは信じられない話だった。


「あのね、スタジアム出るとき、うちの車に乗せてリョウさんを送って行ったんだけど、その時にお礼にって、教えてくれる事になったの♪」


「ずるいだろ、それなら俺達も教えてもらいたい!」


「だって、約束したのは私だし♪」


「親父!」

ツトムは父親に言ってなんとかならないかと問い詰めるもリクにとっては無理な話であった。


翌日、ミサトはチームメイトにリョウの指導について話す。

「本当か?」

一番話に食いついたのはミサトが好きな相手でもある、ユウヤだった。

「う、うん、リョウさんが約束してくれたよ。」

ユウヤが手を握り、問いただす為、ミサトは顔を真っ赤にしていた。

「おい、みんな!週末予定入れるなよ!」

「当たり前だ!」

「マジか?ミサト、嘘じゃないよな?」

疑うものもいたが・・・

「本当だよ、こんな事で嘘言っても仕方ないし。それに週末だよ、直ぐに来るから。」

その言葉にみんな納得する。


そして、監督でもあるヒサモト先生からミサトは呼び出される。

「ミサト、リョウさんが指導に来るとは本当か?」

「はい、昨日の浦和の試合の後に約束してくれました。」

「・・・サイン貰えるかな?」

「はい?」

「いや、だって現役ドイツ代表じゃないか!先生だってサインが欲しい!」

「わ、わたしはもらいましたけど、今回くれるかはわかりません。」

「そ、そうだよな、でも、一緒にボールを蹴れるのだろ?いや、楽しみだ。」

ヒサモトは浮かれている。

「あの~先生、リョウさんは私達の指導をしてくれるのであって、先生とボールを蹴る事はないのでは?」

「・・・お前達だけズルい!」

「先生落ち着いてください!」

「落ち着けないだろ!こんな機会滅多にないんだ、何とかする方法は・・・」

ヒサモトが考え出したので、ミサトは・・・

「失礼しました。」

さっさと職員室を出るのであった。


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