第340話 横山支社長。

横山支社長の家はもめていた。

「マリ!なんで私の名前で勝手なことをしているんだ!」

「なによ、タダオちゃんの為に少し名前を借りただけじゃない!」

「借りていいわけないだろ!職場の人にどれだけ迷惑をかければいいんだ!」

「あなたは西園寺の大阪支社長よ、少々迷惑かけたって誰が文句言えるのよ!」

「・・・」

「西園寺グループ大阪地区のナンバー1でしょ、あなたの命令に誰も逆らえないわ!」

「俺はそうかも知れないが君はちがうだろ?」

「同じよ!夫婦は2人で1人なのよ、だから、 私の言葉はあなたの言葉なのよ!」

「君はそんなことを考えていたのか・・・確かに夫婦は2人で1人なのかもしれない、だがそれはあくまでもプライベートの話だ」

「そんなの関係ないじゃない、それに私も適当にしてる訳じゃないのよ、すべてタダオちゃんの為にやってるの。」

「タダオの仕事をとる事とかか?」

「そうよ、世間にタダオちゃんの良さを知ってもらう為よ。全国CMとかの仕事もあるのよ。

そうだ、あなたミウさんとタダオちゃんを結婚させましょうよ。ちょっとタダオちゃんと歳が離れてるけど、其処は我慢してあげる。なにせ西園寺の後継者だしね。」

「そんなことを出来るはずがないだろう。」

「なんでよ、ミウさんもタダオちゃんに会ったら夢中になるはずよ。」

「そんなわけがない、それにミウさんには既に婚約者がいるんだぞ。」

「あのリョウって奴ね、あんな奴たいした事ないわ。」

「お前に何がわかるんだよ。」

「だって、タダオちゃんの良さがわからないのよ、見る目がないわ。」

「・・・タダオが会ったことあるのか?」

「この前、私がタダオちゃんとワザワザ出向いてあげたのに、私の頼みを無下にしたのよ。」

「ま、まて、出向いたって、どういうことだ・・・」

「なに。その通りよ。タダオちゃんの曲を作らしてあげようって言ってあげたのに断るのよ。信じられる?」

「そもそも面識なんてないよな。」

「そうよ、ほんとなら向こうからお願いして来るのがスジだと思わない?」

自分の妻ながら言っていることが全くわからない。

「じゃあ何かい、リョウさんは知らない子供に自分から会いに行って曲を作らないといけないと言うのかい?」

「知らない子供じゃないわよ!タダオちゃんよ、他の子供と同じわけないでしょ!」

「俺達からすればそうかも知れんが、リョウさんから見たら知らない子供だろ?」

「知らないほうが悪いのよ!」

2人の話は平行線をたどり、どれだけ話しても交わる事はなかった。


「わかった、君が其処まで言うなら、離婚しよう・・・」

「えっ、あなた、何を言ってるの?」

「俺としては会社を私的に利用するなんて許す事は出来ない、お前がどうしても俺の話を聞かないなら、離婚せざるおえない。」

「そんな、あなたと離婚したら私やタダオちゃんはどうするのよ。」

「慰謝料と教育費は払う。財産分与もちゃんとするから当分は問題ないはずだ。」

「それも大事だけど、それよりタダオちゃんの未来はどうするの!」

「タダオの未来は自分で切り開くものだろ?俺達がどうこうする話ではない。」

「あなたの名前で取った仕事から外されたらどうするの!」

「それは、実力が足りなかっただけだろ、実力があれば他の仕事が来るはずだ」

「そんなの困るわ!それにミウさんとの結婚はどうするのよ!」

「そんなの話にもならんだろ。一体どうやったら結婚なんて出来ると思っているんだ!」

「あなたが社長や会長にお願いしたらいいだけじゃない!」

「それで結婚なんて出来るわけがない!」

「なによ!」

「・・・いや、もう話してもわからないのだな、後は弁護士を通してくれ、俺はもう疲れたよ・・・」

「あなた!待って!」

夫婦の離婚に向けての別居生活が始まった・・・

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