第339話 ヒロキをからかいつつ

「あれ?ヒロキ、奥さんは?」

「・・・まだ、結婚してない!」

「時間の問題だろ、妻帯者。」

「誰のせいだ!」

「おまえがレーアさんに手を出すからだぞ。」

ヒロキは俺から目をそらす。

「おい、ちょっと待て。おまえまさか、さすがに・・・してないよな?」

ヒロキは強引に話を変えてくる。

「そんなことより、お前の本職はトレジャーハンターなんだ!」

「おい、待てよ、ソコ大事な所だぞ!答えろよ!」

「いいから!これ以上聞くなら箱に詰めて飛行機に乗せるぞ!」

「・・・あとで確認してやる。」

「トレジャーハンターのリョウ。これを見てくれないか?」

「トレジャーハンターじゃないけど、なんだよ?」

「ドイツで見つけた資料なんだが、何て書いてるかわかるか?」

「文字がかすれて、ほとんど見えないよね。」

「そうなんだが、お前ならわかるかなと思ってな。」

「無理言うなよ、これが交易記録としかわからないよ。」

「えっ?お前読めてるの?」

「汚い字だけど、なんとか読めるぞ。ヴィークがどうとか書いてるから、バイキングか?」

「なんか目新しい事は?」

「特にないかな?あっ、金を乗せた船が沈んだとか書いてる。」

「沈んだ場所とかは?」

「・・・無いね。」

「はぁ、無駄足か。」

「お疲れ~って、これメールでよくないか?」

「おまえ、メールでこれが来たら訳すか?」

「・・・わからないで返信する。」

「だろ?目の前に人がいないとお前はサボる奴だ!」

「ちがうって、興味がないだけだよ。それにメールで訳し出したら、ヒロキから大量にメールが来るじゃないか!」

「だから、どうした?」

「めんどくさい!」

「お前は世界の謎に挑む気はないのか!」

「無いね!」

「くっ、なんでお前はトレジャーハンターにならないんだよ!」

「面白くないもん。書いてる文字読むだけになるし。」

「その文字が読める能力がほしい。」

「あと、現地の動物に聞くという手も。」

「それはお前しか出来ない!」

「便利なのになぁ、いろいろ教えてくれるよ。」

「また、今度探索に協力してくれ。」


「考えとくよ、そ~れ~よ~り~、レーアさんとどうなの?」

「・・・仲はいいぞ。」

「ふーん、それで結婚は?」

「・・・今度、両家で顔合わせをする。」

「・・・進んでるんだね。」

「ああ、しかし、いいのだろうか?」

「何が?」

「いや、レーアは若いだろ?他にもいい男がいるんじゃないかとな。」

「お互いがいいのならいいんじゃないか?ヒロキはレーアさんが嫌なのか?」

「それは・・・」

「はっきりというべきだぞ!」

「まあ、好きだな。」

俺は録音をとる。

「リョウ、その音声をどうする気だ?」

「気にするな。」

「気になるなぁ~」

「ちょっとら宅配するだけだよ。ドイツまで。」

「おい、やめろ。」

「なら、正直になることだな。さしずめ両家の顔合わせが楽しみだ。」

ヒロキをからかいつつ、俺は幸せそうなヒロキを祝福するのだった。

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