第323話 チエの行く先

「ミウ、落ち着いて。チエちゃんも感傷的になってるだけだから。」

「リョウくんはわかってない!」

「まあまあ、それより、チエちゃんのお仕事の話をしようか。」

「はい。リョウさん。何でもしますよ。」

「嫌なことはしなくていいからね。チエちゃんはどんなことがしたい?」

「どんなこと?」

「ほら、歌手になりたいとか映画に出たいとかないの?」

「選べるんですか?」

「まあ、何でもというわけにはいかないかも知れないけど、方向性ぐらいは既望にしたいじゃん。」

「私、ミウみたいに歌手になりたいです。ミウの歌に憧れてこの世界にきたんです。」

「そう、でも、ミウは天才だよ、ミウみたいになりたいなら、物凄く努力しないといけないね。」

「笑わないんですか?ミウみたいになるのなんて無理だって。」

チエは恥ずかしそうに聞いてくる。

「笑わないよ、それゃ何もせずにミウになるっていうのは違うっていうけど、努力するんだろ?」

「もちろんです。」

「なら、今はともかく目的地がミウなだけだからね。笑ったりしないよ。どうせなら、ミウを越えるとかいってほしいぐらいかな?」

「リョウさん・・・」

「俺も協力するから、頑張っていこうか。」

「リョウくんダメだよ、チエは私も出にくい高音域で歌えるんだよ、リョウくんが協力したらホントに抜かれちゃうかも。」

「なら、ミウも努力しなさい。今は圧倒的に先行しているんだから、追い付かれないようにね。」

「はーい。チエ、負けないからね。」

「私もすぐに追い付いてあげるから、覚悟しててね。」

二人はワイワイ騒ぎ出したので、俺は離れて、来ていた柴田に話をする。


「柴田さん、チエちゃんの芸能活動を頼みます。」

「お任せあれ、曲は若様がお作りに?」

「うん、でも、他にいい作曲家がいたらそっちに任してもいいや。」

「そのような者はおりません。」

「いやいや、いるよ!」

「そういえば若、若様に面会を求めているものがおりますが?」

「柴田さんからと言うことは芸能関係?」

「はい、ミウさんの曲を作られた方なのですが。」

「デビューしてから作曲してた人?結構いい曲書くよね。」

「はい、前橋リュウセイと言う方なのですが、お会いになりますか?」

「なんのようだろう?まあ、暫く湯治してるからその間に来れるなら連れてきて。無理そうならまた東京に戻ってからということで。」

「かしこまりました。そのようにしておきます。」

柴田は下がっていく。

その話を聞いていたのかミウが

「リュウセイさん、リョウくんになんのようだろう?」

「そういえば、最近曲を出してないけど、どうなってるの?」

「リョウくんが作ってくれるの待ってるよ。」

「なぁ、それじゃないか?リュウセイさんの所にミウの曲が溜まってるとか。」

「でも、毎回頼んでから作ってもらう契約になってるはずだよ。最初からリョウくん来るの待ってたから。」

「それでも、ミウが売れた理由の1つの人じゃないのか?」

「う~ん、そうだけど・・・」

「なんか歯切れが悪いな?」

「なんかね、リュウセイさん最近見る目がやらしくて・・・」

「そうなの?」

「うん、去年ぐらいからひどくなってきて・・・もちろん二人でレッスンなんてしたことはないんだよ、でも、リュウセイさんはしたがってるみたいで。」

「嫌なら止めたらいいんだよ、曲が必要なら俺が書くし。」

「うん、そのつもりなんだけど、一回事の契約だから、改めて断るのも違うような気がして。」

「まあ、俺の方に来るぐらいだからなぁ~ミウは距離をとっておきなよ。俺が対処するよ。」

「うん、リョウくんお願いしますね。」

俺はリュウセイと会うのに気合いをいれるのだった。

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