第315話 ムギの面接
ムギは入るなり、
「あれ、リョウじゃん、なんでここにいるの?」
「はぁ、面接官だからだよ。」
「えーなんでバカなアンタが大手の面接官してるの?おかしくない?」
俺をバカにした発言に周りの空気が変わる。
「ムギ、面接に来たのか?それとも俺にケンカを売りに来たのか?」
「えっ、なに、アンタが通してくれたらそれでいいじゃん。」
「なんで、俺がお前を通すんだよ。」
「だって、アンタ私の事、好きだったんでしょ?」
「へっ?」
「それぐらい、融通してくれてもいいじゃん。なんなら1回ぐらいしてあげようか?」
「・・・」
俺があまりの事に固まっていると。
「不愉快です、この方を追い出しなさい!」
アズサの命令の元、警備員が追い出そうとする。
「ちょい、何するのよ、離しなさい!」
ムギは警備員に抵抗して暴れる。
「あーちょっと待って、ムギに聞きたいんだけど、なんで俺がお前の事を好きだって?どっちかと言うと嫌いな方なんだが?」
「えっ、なんでそんなこと言うの?私がリョウの初恋の相手じゃないの?」
「まったく?」
「どういう事よ!中学生の時にラブレターくれたじゃない!」
「いいや、書いてもないよ。その頃色恋より男友達と遊ぶ方が楽しかったし。」
「うそ、じゃああれは何?」
「いや、知らんけど、でも、もしそれが俺が書いたとしてもお前から何も言われてないから付き合ってもないよな?」
「それはアンタが奥手で手を出して来なかっただけでしょ!私はアンタの周りにいたのに・・・」
「いたと言えばいたような気はするけど、大概バカにされてたような。」
「じゃあ、なに、私は誰かもわからないイタズラに振り回されて、アンタに当たっていたの?」
「そういう事だね、まあ、昔の話だし、えーと、どうする?ムギにまだこの会社に入る気があるなら後日、別の面接官に面接してもらうよ、ここにいる人達は怒ってるから間違いなく落とされるしね。」
「・・・それはお願いしたいです、私はどうしてもこの会社に入りたいの。」
「何か事情あるの?今なら同郷のよしみで聞くよ?」
「いいの?」
「せっかくだからな、聞くぐらいならいいぞ?」
「じゃあ、話すね、あのね、私のお父さんの会社がピンチなの、それで源グループに就職したら支援出来るんじゃないかと・・・」
「軽くはないが、深刻でもなかった!」
「深刻だよ!数年ぐらいは持ちそうだけど、それ以降はちょっとね、お父さんとお兄ちゃんも頑張っているんだけど、仕事をもらう先がないとね・・・」
「うーん、池田さん、ちょっと調べてもらえます?使えるようなら使ってあげて。」
俺は池田さんにお願いして、取引できる会社か調べてもらうことにした。
「リョウ、いいの?」
「話を聞いたから、でも、調べて源グループが損するようなら出来ないよ。」
「ありがとう!お礼に彼女になってあげようか?」
ムギは投げキスをしてくる。
「お断りします。」
「つれないなぁ~」
「リョウは、源家の婿で私のです。勝手に彼女になろうとしないでください。」
アズサは怒りながら、俺にしがみつく。
「えっ、リョウいつの間に結婚したの?」
「してないよ!ほら、アズサも勘違いすることを初対面の人に言わない。」
「すぐにそうなるからいいんです。」
「あ~なるほどね、リョウ昔からモテるから。」
「えっ?昔モテてた?どっちかと言うと女の子に距離おかれてたような・・・」
「何言ってるの?リョウが初恋の子たくさんいたよ。困ってる時にさりげなく助けてくれてたからね。中でもチトセとヨウコは拗らせてたなぁ~」
「チトセとヨウコが?あいつらこそ近付いても来なかったよ。なんか5メートルぐらい先の木陰から覗き込むような感じで。」
「間違いよ、だって、2人ともラブレター送ってたし。」
「俺は受け取ってないよ?」
「私が捨てたから。」
「はい?」
「だって、リョウは私の事が好きだと思ってたし、みんなその事知ってるのに、ラブレター送るなんて酷くない?」
「酷いのはお前だ、他人のラブレターを勝手に捨てるな!あ~どっかで会ったら謝らないとなぁ。」
「もう時効だよ、それに今さら謝られても困るんじゃない?きっと彼氏も出来てるだろうし。」
「まあ、そうか。2人とも美人だったからな。」
「そうそう、きっと幸せに暮らしているよ。」
「だけどお前は反省しろ!」
「はーい。」
「さて、遅くなったが、面接はどうする?」
「後日受けさしてもらえるかな?」
「わかった、手配しておくよ。一応公平に見るように言うが、落ちる可能性もあるからな。」
「わかってるって。」
波乱ずくめのムギの面接は終わる?後日に延期された。
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