第313話 兄貴の試験
「兄貴久し振りだけど、どうしたの?」
「リョウ、相談があって電話したんだが。」
「なに?」
「俺は今転職を考えているんだが・・・」
「転職?それはまたどうして?」
「お前を見てるとさ、俺ももっと良いところがあるんじゃないかと。」
「そうかな?」
「それでだ、お前の伝手を使えないかなと思ってな。」
「はぁ、どんな所にいきたいの?」
「大手!源グループや西園寺グループに入りたい。」
「うーん、源グループなら今いるし、伝手はあるよ。」
「口聞いてもらえるのか?」
「仕方ないでしょ。まあ兄弟だし、名古屋ぐらいに来れる?」
「もちろん!行くさ。」
「じゃあ、履歴書もって来てよ、しばらくはこっちにいるし。」
「あれ?お前東京じゃなかったのか?」
「ちょっとケガして湯治に来てるんだよ。」
「またケガか?そろそろ身体に気を付けないと、後で後悔するぞ。」
「へーい。ケガしたくてしてる訳じゃないんだけどなぁ~」
「ケガするような所に行くからだ。まあ、過ぎた事を言っても仕方ないな、次から気を付けろよ。あと俺の斡旋頼むよ。」
「ありがとう。たぶん大丈夫だと思うけど聞いてみるよ。じゃあねぇ~」
俺は電話を切った。
そして、そのまま織田さんに電話をかける。
「織田さんさっきぶりです。」
「若どうしましたか?」
「俺の兄貴が転職したいって連絡あったんだけど、源グループに入れる?」
「若の兄上なら間違いなく入れますな。あとは役職ですが係長から始めますか?」
「そこまで厚待遇でいいの?」
「もちろんでございます。ちょうど、近々面接の予定がありますからその時にでも来ていただけたたら。」
「わかった~兄貴に連絡しておくよ。」
「はっ!」
そして、兄貴に連絡し。面接日を迎える。
「リョウ、ホントに大丈夫なのか?」
兄貴は名古屋支部のビルの前で怖じ気付いていた。
「大丈夫だって。何とかなるから。」
俺はイタズラ心で採用が決まっていることを伝えていない。
「見ろよこのビル、田舎者を拒絶しているぞ!」
「してないから!さあ、行くよ、俺まで付き合って来てるんだから。さっさと中に入ろう。」
俺が先導して兄貴と共に中に入る。
そして、受付で。
「今日、採用試験の面接に来たんだけど、何処に行けばいいかな?」
「若様!」
「あーそれはいいから、ちょっと秘密にしたいんだ。」
「申し訳ございません。」
「うん、いいよ。それで何処かな?」
受付は急いでパソコンを調べ。
「五階会議室で行われるようです。若様には控室として応接室が用意されております。ただいま案内の者がまいりますので少々お待ちください。」
「ありがと。」
俺は案内の人を待ち、兄貴と共に面接会場に向かう。
「リョウも行くのか?」
「まさか、でも、今日は何人か面接に来てるそうだから兄貴は頑張れよ。俺は知り合いに会いに行ってくるよ。」
「ああ、気合い入れて行ってくるよ。」
俺は兄貴と五階で別れ、その足で応接室に入る。
「あれ、リョウ、お義兄さまは?」
「面接会場に向かったよ。」
「ここに呼ばなかったんですか?私は初対面だからキチンと挨拶したかったのに、」
「呼んだら受かってるの気付くじゃん♪」
「まさか、伝えてないのですか?」
「もちろん、ガチガチに緊張してたよ。」
「イジワルしないで教えてあげたらいいのに。」
「弟のちょっとしたイタズラだよ。それより、他の人はどんな人なの?」
「えーと、1人は西園寺本社で営業係長をなさってた方で・・・」
「その人、石戸って言わない?」
「あれ、リョウ知ってる人?」
「知ってるも何も、西園寺で俺を1度クビにした人。ほら、撮影所であった時だよ。」
「そういえば、クビにされたとか言ってましたね。ならこの方を源グループが採用する事はありませんね。他の方でリョウの気に入らない人はいる?」
俺は履歴書を見ながら、
「うーん、知らない人ばかりだなぁ・・・あっ、こいつ知ってる!」
「どれですか?」
「松原ムギ」
「・・・女性ですか?一体どんな知り合いか教えてもらっていいですか?」
「アズサ。ちょっと怖い。」
「リョウ、いいから。教えてくれる?」
「たいした知り合いじゃないし、いい関係でもないよ。ただ、小、中の同級生で俺やダイキをバカにしてた奴なんだ。」
「リョウ達をバカに?何か理由があるの?」
「当時、俺とダイキはよく仕合をしてたんだけど、それを見て『今のご時世で勉強もせずに剣を練習してバカじゃないの!』ってよく言われてた。」
「・・・向こうが正しくないですか?」
「今ならそう思うけど、家庭の事情的には剣を覚える必要もあったしなぁ~まぁ、そんな感じで会うたびにイヤミ言われたから余り好きじゃないかな?」
「うーん、それを理由に落とすかは迷う所ですね。」
「会わない部署とかなら全然平気だよ。嫌いというわけでもないしね。」
「それなら面接結果次第にしましょう。他には誰かいますか?」
「いや、そんなとこかな?十人いるなかに兄貴を退けても2人知ってる奴がいることに驚きだったけど。」
「世間は狭いですよね。」
俺とアズサは面接時間までのんびり過ごしていた。
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