第277話 旅立ち

その日は曲を作っていた。

現実を見ないように・・・

「リョウ時間だ。」

「ついにか・・・やだ、いきたくない!」

そう、ギリシャに旅立つ。

「往生際が悪い!」

「飛行機やだよ!船で行こ!マタに用意してもらうから!」

「時間がかかるだろうが!貸し10使うんだから大人しく来い!」

「あぅ~」

俺は無駄な抵抗をしてみたがダメだったようだ。

「リョウくん大丈夫?」

「だいじょばない。」

「学校がなければ私たちも行くのに。」

ギリシャに行くのは俺、ヒロキ、ダイキ、リナ、ミズホの5人だった。

「俺も仕事が・・・」

「やかましい!この自由人が!チャッチャと行くぞ!」

「うう・・・」

「リョウ、源家でチャーター機を用意してあるからね、せめてこれぐらい協力さして。」

「チャーター機は落ちない?」

「落ちないから、安心して、整備も東海支部の整備員が命をかけて完璧にしてるよ。」

「東海支部のみんなに信じてると伝えて置いて・・・」

「リョウくん弱々しいよ。」

「だって・・・」

「あーもうめんどくせぇ!」

ダイキがリョウのクビを叩き気を失わせる。

「ヒロキ、起きる前に乗せちまおうぜ!」

「ダイキは無茶するな。」

「リョウの言い訳聞いてたら、いつまでも乗れないぞ。」

「ダイキ、お兄ちゃんになにするの?」

「ま、まてリナ!リョウの為なんだよ!ほら、意識があると辛いだろ?」

「そうだね、じゃあ出発しよう、お姉ちゃん、行ってきます。」

「リナちゃんミズホさん、リョウをお願いね。」

「任して!」

そうして、飛行機は出発した。


「う、ううん、ここは・・・」

「おっ!起きたか?」

「ダイキ、何をしやがる!」

「そんなこと言ってていいのか?」

「なに・・・空飛んでる?」

「そうだよ、リョウ、今お空の上だよ~1万メートルの気分はどうかな?」

「・・・」

「あれ?リョウ?おい?どうした?」

「・・・」

「リョウがフリーズしたー!」

「お兄ちゃん!」

リナが抱き締める。

「大丈夫だよ、リナがついてるから。」

「リナ!」

俺はリナに抱きつく。

「ヒロキ、見ろよ、小学生に抱きついてるヤツがいるぞ。」

「ダイキもあまりからかうなよ、可哀想だろ?しかし、これ程ダメとは・・・」

「ヒロキ、これはチャンスなんだよ。写真撮っとこ。」

「お前鬼だな・・・」

「交渉ネタゲットだぜ!」

「ダイキ、あとで覚えてろよ・・・」

「リョウ、外の気配を探ってみな、動物はいないぞ~」

「・・・・・・」

「返事がない、ただのシカバネのようだ。」

「ダイキ、お前たちホントに幼馴染みか?」

「そうだよ?腐れ縁?」

「もっと優しくしてやれよ。」

「お互いに甘やかす関係じゃないからな。弱点見せるヤツが悪い。」

「ダイキ、ホントゴメン、もう無理です。今は見逃して・・・」

「ホントにやばそうだな?あと6時間あるけどだいじょうぶかな~~~」

「・・・」

「あっ、リョウ兄、起きたの?」

「ミズホ・・・俺はもうダメだ」

「何を言ってるの?」

「ほら、落ち着いて。」

「だって、周りに気配が何もないんだよ!怖いじゃん。」

「言ってる意味がわからないけど、これを持って。」

「首輪・・・ポチのか!」

「そうだよ、ポチの前で震えてていいの?」

「ポチも許してくれるはず・・・」

「あら?ポチもきかないなんて!」

「いや、落ち着きはするけど、不安もなくならない。」

「お兄ちゃん、少しは話せるようになったね。」

「少しだけ・・・ミズホ、飛行機の間借りてていい?」

「いいよ、それに私に抱きついてくれてもいいからね。」

「そこまでしなくても・・・」

その時飛行機が揺れた。

「にゃあぁぁーーー!!」

「リョウ兄!」

「お兄ちゃん!」

「もうやだ!オウチ帰る!」

「リョウ兄、落ち着いてね。」

ミズホが抱き締めてきたので、そのまま俺はミズホを抱き締めて離さなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る