第273話 試合後

試合後、田中から、

「完璧にやられたよ、ユニフォームを交換してくれ。」

「クローこれってもう1枚もらえるのかな?」

「くれるから、交換してやれよ。」

「なら、交換しよう。」

俺は田中と握手をしてユニフォームを交換した。

「田中さん、最後やらしいことしてスミマセン。」

「最後?ああ、あの走り回った事か。」

「田中さんの足が止まるの狙いでした。」

「あれをされると辛いが、あの時間であそこまで走られたらなぁ、まあ、謝られる事でもないが、それよりなんで日本代表じゃないんだ?それに何処でサッカーしてる?聞いた事がないんだが?」

「サッカーしてませんよ?今日はたまたま声をかけられて試合に出ました。」

「へっ?」

「ドイツ代表に会えると聞いてホテルに行っただけなんですよ。」

「じゃあ、プロじゃないのか?」

「はい。試合に出るのも久し振りですし、出た試合も草サッカーですからね。」

「リョウ、もしかして君は日本国籍持ってないか?」

「持ってますよ。」

「なら!」

「田中くん、うちの代表を勧誘は止めて欲しいなぁ~」

「タイガー!」

「リョウは大事なドイツ代表なんだよ、日本には渡せないね。」

「いや、そもそも日本人だろ?」

「そんなのどうとでもなるさ、それにサッカーは代表の国籍にうるさいんだよ。」

「この試合は親善試合だから、ノーカウントだろ?」

「うっ、だがね、リョウの才能を見出だしたのはうちの監督だ、なんの実績もない彼を代表デビューさしたのだからね。」

「それより、日本人は二重国籍持てないはずだ、リョウのドイツ国籍がないはずだろ?」

「あーーー!聞こえないなぁ。」

「図星か!!」


『えー、ヒーローインタビューです。ハットトリック達成のクロー選手と初代表で2ゴール1アシストのリョウ選手に来てもらってます。』

『ハットトリック達成ですが、いかがですか?』

「日本のファンの皆さんにいいプレーを見せる事が出来たと思います。それに新しい仲間の力に感謝ですね。」

『その新しい仲間のリョウ選手、初代表どんな気持ちですか?』

「えーと、埼スタのピッチに立てて最高の気分です。ゴールも決める事が出来ましたし、サッカーやっててこんなに気持ち良いことは初めてです。これってテレビ放送ですよね?浦和の皆さん、お久し振りです!」

『えっ、浦和の方にお知り合いが?』

「浦和のサポーターです。普段は観客席で応援してる側ですけどね。」

『もしかして、日本人ですか?』

「リョウ、答えなくていいよ、彼はドイツ代表だ、それ以外にはないから。」

『クロー選手、しかし、彼にインタビューを?』

「もういいだろ?俺達は失礼するよ。」

『クロー選手、リョウ選手!』

クローはリョウを連れてロッカーに下がっていった。

「クロー良かったの?」

「日本人だと言うと色々厄介になりそうだからな。」

「あっ、そっか。国籍ないし。」

「そういう事、こんなに活躍するとは思わなかったからな。」

「楽しかった♪やりたい事が全部出来た気がするよ。」

「なんで、日本はリョウを代表に呼ばなかったんだろうな?」

「プロじゃないし、学生サッカーも弱い所だったからね、試合に勝ったことないチームにしか行ってないし。」

「もったいないな。それより明日から大変だぞ?」

「なんで?」

「各国のクラブがお前を狙ってくるぞ。」

「へっ?」

「フリーなドイツ代表、実力も見せたしな。リョウはやりたいリーグはないのかい?」

「考えた事もないよ。」

「それならよく考えたらいいよ俺としては、ドイツに来て欲しいが。」

「考えておきます。というかサッカー選手になることから考えますよ。」

「俺はなるべきだと思うがね。」

ロッカーにつくと、

「お兄ちゃん!凄かったよ、かっこよかった♪」

リナは抱きついてくる。

「リナ、汗がつくから、離れなさい。」

「お兄ちゃんの汗ならいいもん。」

「せめてシャワー浴びるまで待ってよ。」

「はーーい♪」

シャワーから出ると。

「それで、リョウMVPは?」

「えっ、ああ、俺的にはクローとエジとディアとGKのイアーかな?」

「イアーもか?」

「的確な指示でシュートすら打たせてなかったしね。」

「よく見てるな。」

「さすが、リョウだ、よくわかってるな♪お前らもよく聞いておけよ!」

「でも、せっかくの記念だし、リナ大変かも知れないけどみんなにサイン書いてあげない?」

「お兄ちゃんが言うなら書くよ♪」

「ありがと、俺のデビュー選手だしね。」

「じゃあ、みんなにはサインを書いて、MVPの人にはサインとMVPって書いておくね。」

「ありがと、リナ。」

「うん♪」

ドイツ代表が並んでサインを貰っている姿はちょっと笑えたが。

「さて、ホテルに帰るか、リョウどうした?」

「俺、友人が来てますので合流して帰りますよ。それにホテルに泊まってないですしね。」

「そうか?残念だな?じゃあ、ここで別れるが、また会おう。」

「ええ、今日はありがとうございました。お陰でいい思い出になりましたよ。」

「何を言うんだ?これからもいい思い出を作ろうじゃないか、ワールドカップを目指してな♪」

「あはは、夢がデカイですね。おっと、迎えがきたみたいです。それでは失礼します。」

「気をつけてなー」

俺はドイツ代表と別れ、ミウとアズサに合流した。

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