第271話 開始前

「ミウ♪今日の試合、ドイツのベンチで見ることになったから♪」

「えっ?リョウくん何言ってるの?」

「それがね~、ドイツの監督さんの好意でベンチ入り出来ちゃった♪」

「意味わからないんだけど?」

「そういうことだから~♪」

「ちょっと、リョウくん?」


「どうしたの?ミウさん。」

「アズサさん、リョウくんドイツ代表のベンチで試合見るって。」

「えっ?リョウは何を言ってるのかしら?」

「なんか、変な事になってそう・・・」

「なんでおとなしく試合を見るって選択肢がないんでしょうね。」

あきれる2人だった。


「今日はベンチにゲストがいるからな、気を抜くなよ!」

監督の激に選手が引き締まる。

さすがにホテルのような和やかな空気は無くなり。そこには戦士の息吹が感じられた。

「お兄ちゃん、似合ってるよ♪」

「リナありがと。」

俺はベンチに入る事もあり、ドイツのユニフォームを着ていた。

「リョウ、せっかくだからアップに参加しろよ。」

「いいんですか?」

「ボールぐらい蹴れるだろ?」

「はい!」


試合開始前、俺はドイツ代表に混じってアップを開始する。

満員の埼スタをピッチから見るのは初めてだった。


「誰だあの選手?」

「わかんねぇ?」

「RYO?聞いたこともないけど。」

「監督が急に召集したみたいだけど・・・」

観客席は混乱していた。


「リョウ、緊張しているな?」

メストさんに日本語で話しかけられた。

「はい、って日本語喋れるのですね。」

「リナちゃんが好きな言語と言ってたからな、みんな多少はわかる奴がいるが、俺はマスターしたのだ!」

「凄いです。」

「それより、ボールを蹴ってみないか?今からシュート練習だが気楽に蹴ればいいさ。外しても何も言わないしな。」

「はい、やって見ます。」

俺はシュート練習に参加した、

前の人にボールを預け、横にパスを出してもらうシンプルな練習だった。

「ヨッ!」

綺麗にゴール上角に決まる。

「今日は調子いいなぁ~ヤッパリ気分が向上してるからからな?」

「リョウ、いいのを蹴るね。キーパー悔しがってるぞ。」

「ははは、まぐれですよ。」

「続けてやってみようか?」

「はい。」

その後も俺はゴールを淹れる事ができた。

すると、パスが乱れた時があった。

ボールは浮かされ、かなり遠い距離だった。

俺は全速力で追い付きそのままボレー、ゴールも狙いどおり角に決めれた。

「ふむ、リョウ、君ポジションは?」

「サイドをやってますね。」

「そうか、なら次の練習はクロスを上げる側に行ってくれ。」

監督に言われクロスを上げる。

選手の歩幅、スピード、性格などを考慮して高さ、速さを自分なりに調整して出す。

狙った所にドンピシャでいくのはやはり気持ちがいい。

それに選手もバンバン決めている。

「リョウもっと厳しく出せるかい?」

「わかりました。」

俺は監督の指示通り、ギリギリに出してみるがちゃんと決めていた。

「すげえなぁ、あんなの俺じゃ決めれないよ。」

「リョウ、ボールを受けたら自由にDFをかわしてクロスを上げてくれ。」

次の監督の指示に従う。

単純に受けて反転するとDFに防がれた。

「ありゃ、動くのね。」

「リョウ、もう一度!」

次は来たパスを受けに行って、受けた時にボールを浮かし追ってきたDFの頭を越え、落ちてきたボールを山なりのクロスを上げ、走り込んできたFWに、ってFWが来ていなかった。

「クロー!今のは追い付いただろ!」

「すいません、思わず見とれてました。」

それからいろんなパターンを試した。止められる事もあったが7割は成功した。

そうこうしているとアップの時間が終わり、ロッカーに引き上げる。

「すげぇ、楽しかった♪」

「リョウ、お前は凄いな!初めてプレーするのに欲しいところにピッタリくるんだよ!」

「テレビとかで良く見てましたから。それより足元に来るボール凄いですね、メチャトラップしやすい。俺の方こそ欲しいところにもらってますよ。」

「俺はショックだよ、こんなに簡単にクロス上げられるなんて・・・」

「まあ、設定が悪いな、どうしても後受けになるから対応が遅れるのは仕方ないが・・・」

「それでも悔しいよ。それに試合でやられたら立ち直れないよ。」

「はいはい、楽しいのはそこまでにして、試合に集中するんだぞ。」

「もちろんですよ、監督。」

「ありがとございます。楽しかったです、いい思い出になりました。」

「いや、まだ試合が始まってないからな。」

「あっ・・・」

ロッカーに笑いが木霊する。


その頃、観客席ではメンバー紹介が行われていたがドイツ代表に控えとはいえ、日本人の名前があることに驚いていた。

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