第214話 不機嫌
「リョウ兄、機嫌悪いの?」
「うん?まあね、態度にでてた?」
「うーん、なんか雰囲気がちょっと違うよ。」
「ゴメン、ミズホは関係ないのに。」
「わからないぐらいだけど、どうしたの?そんなに嫌だったの?」
「あの楽譜の曲はねぇ、凄く気持ち悪かったんだよ。こう、リズムに乗ると1音外れたり、音が足りなくて繋がらなかったりで、それでもなんとか正解を探しながら弾いたけど、1楽章弾いたら嫌になったよ。」
「私には違いがわからなかったけど?」
「うーん、しいて言うなら指先に毛虫がはうようなそんな感じをタビタビ味わうかんじかな?」
「うー、私は嫌だな。」
「俺も嫌だよ。それでやめたの。あれ以上弾いてたらトラウマになりそう。」
「まあ、いいんじゃない?私は別にリョウ兄が音楽家と思ってないし。」
「そうだよね!俺は剣士でサラリーマンだもん、ピアノなんて弾かなくても問題ないよね!」
「剣士?サラリーマン?リョウ兄何を言ってるの?動物使いじゃないの?それにサラリーマン言えるほど仕事に行ってないよね?」
「・・・ラルフ~ミズホがいじめる。」
「ワン!」
「ラルフ、私に吠えるの?」
「クゥーン。」
「ラルフ!負けるな~」
ラルフは俺とミズホを交互に見る
「リョウ兄、ラルフをいじめない!」
「あーい、ごめんよラルフ。」
俺が撫でると尻尾を振り、嬉しそうにしていた。
居間にアズちゃんもやってくる。
「リョウくんいる?」
「アズちゃんいるよ~どうしたの?」
「さっきの音楽家さん、かたついたよ。」
「早くない?」
「正確には近々謝罪にくるか、団体が解散するかのどっちかかな?」
「何したの?」
「資金援助の停止と源グループ所有の練習場、ホール等の場所の使用停止かな?あーあと、所属の人に音楽用品の販売停止かな?」
「あらら、結構重いね。」
「そりゃ、呼んでもないのに源本家に勝手に来て、次期当主を罵倒したんだもん、会社に連絡したらみんな怒ってたよ。」
「あーーそうなるのか、たしかにキサクさんが呼んだけど、ここは源の屋敷だもんね・・・って次期当主ってなに!」
「本来は知り合いとか、呼ばれた人しか来れない所なんですよ。」
「ねえ、次期当主の部分に抗議をしたい!」
「いまさらだよ、あ・な・た♡」
「アズサさん!リョウ兄は渡しませんよ!」
「ミズホさん、あなたも側室にどうですか?私はリョウくんを独り占めはしませんよ。」
「えっ、側室なんて・・・でも、結婚式とかしたいし、」
「結婚式ならすればいいじゃないですか?なんなら源グループ所属の結婚式場の好きな所を使用可能ですよ。」
「えっ、えっ!」
「考えておいてくださいね?私はミウさんと違いますから、リョウくんをみんなでシェアしましょ♪」
「アズちゃん、ミズホをたぶらかすなよ~ほらミズホも。」
ミズホは妄想の世界に行き、ボーっとしていた。
「こりゃだめだ、まあ、音楽家の事は大事にならないならいいか、アズちゃんありがと。」
「いえ、あと源家が世話している音楽家は血判状を提出してきて身の潔白を訴えているそうですよ。」
「その人達に何かしないでよ。」
「モチロンそのつもりです、まあ、その方達も同じにされたくないので出してきただけだと思いますが」
平井率いる関東交響楽団は何もしないまま、その日のうちに進退が窮まっていた。
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