第215話 平井の末路 前編
平井は源家を追い出されて憤慨していた。
「なんで、俺があんな若造に追い出されなければいけない!」
そして、むしゃくしゃしたまま、若い団員を呼んで飲みに行った。
「チエミちゃんどう思う?」
平井の横に座らされた団員は最近入団した、大学生のチエミだった。
「えっ、団長を追い出すなんて酷いと思います・・・」
「そうだろ~だから、慰めて♪」
平井はチエミの膝の上に転がり膝枕を無理やり行った。
チエミは周りに助けを求めるがみんな関わらないように目をそらす。
平井は酒が入るとタチが悪いことは団員全員が知っている、若い女性がいないとグチグチ文句をいわれ、若い女性がいるとセクハラを行う。しかし、肩書きもあり、自分達が努力して掴んだ関東交響楽団の席を失いたくない一心で黙認していた。
「ねぇ、チエミちゃんは一人暮らしだっけ?」
「ええ・・」
「どうだい、自宅で指導なんて。」
「いえ、団長に迷惑をかけるわけには・・・」
「迷惑なんてね、ほら、今日なんかは俺も暇だから、このあと、ねっ?」
今日の平井はいつもよりセクハラが酷かった。
「すいません、今日はちょっと・・・」
チエミも家にあげると何をされるのかわかったものじゃないので必死に断っていた。
「じゃあ、いつならいいんだい?スケジュールを開けておくよ。」
「えっ、そ、そんな団長のスケジュールを開けるなんて、ほら、もっと上手くなってからにしましょ。」
「そうかな?ボクが教えてあげるよ、いろいろとね。」
チエミが必死に逃げる中・・・
「団長!一大事です!」
「あー!なんだ、人が気分良くしているのに、だからお前は使えないんだ!」
「そ、それどころじゃないんです!今マネージャーから連絡がありまして、源グループが援助の打ち切り及び仕事の撤回をしてきました。」
平井起き上がり、
「なに!ホントにしてきたのか!非常識な奴め!」
「団長なにか心当たりが?」
「少し、若い奴を注意しただけなのに、こんな対応をとるとは源グループも終わってるな!」
「しかし、源グループの援助がなければ、運営出来ないのでは?」
「なに、何処でも援助してくれるさ、何せ我等は関東交響楽団だからな!」
平井は酒の勢いもあり、深く考えていなかった。
そして、飲み会を続けていると、マネージャーが走り込んでくる。
「団長!こんなところで何をしてるのですか!」
「なんだ、神田、俺は今飲んでいるんだ、用事は明日にしろ!」
「それどころじゃないんです!連絡したでしょ!源グループが我々から手を引いたんですよ!」
「なんだ、その事ぐらいで騒ぐな!むしろ音楽に理解のない奴の援助などイラン!我等に援助するのは選ばれた相手でないとな。」
「団長!酔いを冷ましてください!源グループほど音楽に協力的な所なんてありませんよ!」
「そんな事ないだろ、むしろフリーになってもっと稼げるかも知れないな。」
マネージャーが必死に訴えるも、平井は聞く耳を持たない。
「兎に角、明日、朝九時から会議を行いますから、今日は早く帰って酔いを冷ましてください!みんな、今日は解散だ!それと明日は大事な連絡が入るかも知れないから事務所に来るか連絡が着くようにしておいてくれ。」
「はい。」
団員のほとんどはマネージャーの言葉を良く理解しており、事の重大差を認識していた。
翌朝、といっても昼前に平井は事務所に来る。
「あー神田のせいで二日酔いじゃないかどうしてくれるんだ!」
頭がいたく、不機嫌な様子でマネージャー神田に当たる。
「団長、なんで遅れて来ているのですか?朝から会議だと伝えたでしょ!」
「あーそうだったか?まあ、まだ午前中だ朝といえば朝だろ、それで会議の話はなんだ、くだらん話なら殴るぞ。」
「・・・関東交響楽団の進退がくだらないとおっしゃるのならいくらでも殴ってください!」
「おいおい、進退なんて大袈裟な。」
「朝、懇意にしている源グループの人に聞いてみたのですが・・・団長、源グループの次期当主に罵声を浴びせたとか、しかも、脅迫と取れる事を言ったとか、先方はかなりお怒りの御様子でした。」
「脅迫なんて大袈裟な、ただ作った曲を埋もれさすとかはいったが・・・」
「充分脅迫ですよ、どうするんですか?すぐ資金は底をつきますよ。」
「あー気はのらないが適当なホールで一般人向けの公演をやるか、それで当面の資金は手に入るだろ?それより、なんでそんなに早く資金が底をつくんだ?それなりにあるだろ?」
「・・・団長は何処のホールを借りるおつもりですか?」
「そうだな、近場で客が入って安いところ・・・横浜北条音楽ホールはどうだ?あそこなら安く借りれるだろ?」
「無理です。」
「なんでだ!いつもならすぐ借りれるだろ?関東交響楽団の名前で押さえてこい!」
「あそこは源グループが出資してる音楽ホールです。安く借りれたのも源グループの好意からです!」
「なに!」
「それに今借りてある練習場も出ていかなければなりませんし、この事務所も別に移転しなければなりません。」
「なんでだ!この事務所は先代の繋がりで安く借りれてるはずだろ!出ていく理由がない!それに練習場も立地、音響設備がいい最高の場所じゃないか!少々高くとも押さえておくべきだ!」
「・・・両方、源グループの好意でお借りしておりました。この度の件で先方は下から上までかなりお怒りで場所を貸すなんてもっての他、音楽用品の販売まで行わないと言われました・・・」
「な、なに・・・たかが若造1人怒鳴っただけだぞ・・・」
「なんで、源本家に行って、其処の人を怒鳴る必要があるんですか?どんなに失礼な事をされても黙って帰ってくればいいじゃないですか!」
「しかしだな!奴は音楽を舐めているんだ!誰かが注意しなければ!」
「それなら、私達を巻き込まないでください!私達は明日からどうすればいいんですか・・・」
マネージャー及びスタッフ、幹部全員のため息が出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます