第213話 キサクの苦労

平井が帰ったあと、微妙な空気になっていた。

「じゃあ、これでお開きですね。あーキサクさん平井と関係ある人を今後連れて来ないでくださいね。」

「わかった、すまなかったね、リョウくん」

「いえ、皆さんにも言っておきますが俺は別に作曲家になりたいわけじゃありません。ですので邪魔したければいくらでもしてください。俺は作らなくなるだけですので。」

「そんな・・・」

「名曲が生まれる機会を奪わないでくれ!」

「それは俺の知ったことではありません。俺は別に名曲を作ってる気もなければ、世に出したい気持ちもありません。ただキサクさんの頼みで気が向いたら楽譜にする、そんな感じなんですから。」


そのまま解散したあと、キサクの元に集まり憤慨していた。

「キサクなんだアイツは何様だと思っているんだ!」

「平井が怒るのも無理ない!」

「そもそも、音楽の神に愛されているのにそれを独り占めするなんて許されない大罪だ!」

みんなの意見を聞いたあと、キサクは

「みんなの意見はわかった。ところで君達は剣を振り回す連中を君達はどう思う。」

「なんだいきなり?そんな野蛮な連中の話がなんだ?」

「そうだ、暴力に生きるような下等な奴等の話なんか関係ないだろ?」

「君達が見下しているのはよくわかったがリョウくんは自分を剣士と言っているんだ私達と価値観が違う。そして、音楽はここ最近人の薦めで始めただけのものらしい。」

「そんな!あれ程の才能があるのに!」

「だから、彼には音楽の素晴らしさをわかってもらい、いずれ音楽に専念して欲しかったのだが・・・ボクも焦っていたのだろう、最近は無理強いばかりしてしまっていた・・・」

「しかし、あれ程の才能をみると埋もれさすには勿体ない。」

「だからだよ!あんな平井の奴のせいで彼が音楽に興味をなくしたらどうするんだ!彼はピアノが弾けなくても、作曲しなくてもいいと考えているんだぞ!それがやっと演奏会を開くぐらいには興味を持ってくれたのに・・・」

「もしかして、今後作曲をしないということは・・・」

「充分にあり得る、いいか、平井の奴にいらないことはさせるなよ。あとみんなも平井に同調してリョウくんを責めるような事はしないでくれ。彼の曲の価値はわかるだろ、私の残りの人生は彼の曲を世界に広める為に使いたいんだ、くれぐれも邪魔はしないでくれ。」

「キサクさんがそこまで言うなら、私達も何もしませんが、平井は何かするのでは?」

「源家がさせないと思うが、一応みんなも注意しててくれないか?」

「ああ、しかし、リョウという奴はワガママな奴だ。」

「しかし、音楽家らしいじゃないか。」

「ちがいない、だがもっとマトモな作曲家なら付き合い易いんだが・・・」

「少なくともリョウくんは特殊だと思う。ここまで音楽に興味がないのに才能だけ恵まれてるのは羨ましいを越えて殺意が芽生えそうだよ。」

「私達ににあの才能があれば・・・」

「求めないから、手に入るのかもしれないな・・・」

みんなからため息が漏れる・・・


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