第211話 連絡

屋敷に帰った時に携帯が鳴る。

「もしもーし。」

「・・・リョウくん、何か言うことが有るんじゃないかね?」

電話の相手はキサクさんだった。

「えっ?うーん、特に無いですよ?」

「じゃあ、君は今日何をしてたのかね?」

「名古屋で演奏会。」

「なぜ、私を誘ってくれない!」

「あーこれ源グループの方だけのプライベートイベントだったんですよ。それでキサクさんを呼べないんです。」

「それでもだよ!しかも、源グループ内にリョウくんが曲を提供したとか。」

「自信作です。」

「そんなことを聞きたいんじゃない、まあ、自信作と言われると期待してしまうが・・・楽譜も見せてくれないのかね?」

「うーん、源グループに問い合わせてください、あの曲はあげましたから。」

「君はホントに著作権を理解しているのかね?」

「理解してるよ、でも、したいことをする自由も大事かなと。」

「それはわかるが!ボクはどうやって聴いたらいいんだい!」

「そこですか!うーん、誰かが演奏するのを待つ?」

「君の自信作を待つのかい?そんなの無理に決まってるじゃないか!」

「言いきらないでください!キサクさんも大人なんですから我慢の1つぐらいしましょうよ。」

「他の事はいくらでも我慢するが音楽については我慢はできん!」

「うわっ、ダメな大人がいる。」

「リョウくんはいつ東京に帰って来るんだい。」

「何か怖くなってきたので帰りたくないです。」

「じゃあ、ボクが行ったらいいんだね。」

「いやいや、だめですって、ちゃんと帰りますから。」

「それじゃ帰ったら聴かせてくれるね。」

「えーめんどくさ・・・」

「何かいったかね?」

「いえ、何も。」

「じゃあ、帰ったら訪ねるから。」

そして、電話が切れた。


「うう、キサクさんが俺をいじめる。」

「キサクさん、ずっと我慢してたみたいですよ。レコーディングしてもCDは発売されないし、リョウくんは死にかけたり、警察に追われたりでその都度知り合いと供に抗議をしてくれていたんですから。」

「アズちゃん、詳しいね。」

「源に確認の連絡をしてきてましたから。」

「仕方ない、演奏ぐらいするか。はぁ、帰ったらやること多いな。」

「頑張ってくださいね。」

帰りたくないなぁと思いつつ名古屋の夜は終わった・・・


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