第188話 総理と交渉
「若様、政府の使者が参っております。お会いなされますか?」
就任挨拶の翌日、政府から使者が来た。
「今更な感じはあるけど、会いはするか。応接室に通して。」
「はっ、かしこまりました。」
「リョウくん、会うの?」
「一応ね、落とし所は大事だし。」
「このたびは猿渡と西口が失礼致しました。」
使者として来ていたのは宮木総理本人だった。
「大胆ですね、総理自身がお越しになるとは。」
「西口と猿渡に任しておかしな事になったからね、私が直接話をしようと思って。」
「それで、どうしますか?全面戦争ですか?」
「ま、待ってくれたまえ!こちらに戦争する気はない。西口、猿渡は解任するから矛を納めてくれないか?」
「しかし、総理の約定ですら破る人間が政府にいるのがわかりましたので今矛を納めても時期を見て仕掛けてくるだけでしょう。」
「そ、そんな事はさせないから!」
「総理がいる内はいいかも知れませんがその後は?」
「・・・わかった、与党全員の署名を集めて渡す。何かあればこれを公開してくれ。これで言い逃れは出来なくなるはずだ、そして、新たに入党の時に署名をさせる。」
「なるほど、ならそれでいいでしょう。一応矛は納めてもいいですよ。」
「助かる。」
「ただし、政府が何か攻撃してきたらすぐに反撃に移ります、今度は容赦しませんから。」
「・・・脅す気かね?」
「ええ、しかし、何もしなければ、何もしませんよ。」
「出来るのかね?」
「出来ない事はいいませんよ。何なら猿渡と西口の首を明日までに用意しましょうか?」
「・・・やめてくれないか。」
「わかりました。まあ、こちらも汚い首なんていりませんから。」
「君は国と争う事が怖くないのか?」
「別に?」
「源家に迷惑をかけているとは考えないのかね?」
「それはありますね、でも、いざとなれば、一人で特攻しますけど、その際はなるべく多くの被害を出して見せますよ。」
「リョウくん、それは私が許さないから。リョウくんが死ぬなんて事は起きません。」
「ということで、突撃さしてくれないだけです。」
「ははは、仲睦まじいのだね、源家が桐谷くんを切り捨てる事がないのがわかったよ。」
「そうです、既に源家はリョウくんを身内としています。もし、手を出すなら覚悟してください。」
「出さない、約束しよう。だが手を出さない代わりに頼みが一つあるのだが・・・」
「・・・何でしょ?聞くだけは聞きましょう?」
「望月研究所で開発された新薬の提供をしてもらえないか?」
「アズちゃん事情わかる?」
「はい、この一件で薬の配布は源家の関係者のみに配布が決まってます。」
「そこをなんとか!他国にも提供しないと国際的にまずいんだ!」
「なるほど、政府の弱みはそこでしたか。では、源家の関係者に配ったあと、友好的な所から配りましょう。」
「・・・配る権限はいただけないかな?」
「渡しませんね。その代わり交渉ぐらいは受けるようにしますよ。担当窓口を作りますのでそこと交渉なさってください。」
「わかった、ただ、ゼロは止めてくれないか。少しだけでも政府に回してくれ。」
「では、月一万件だけ提供しましょう。アズちゃん、いけるかな?」
「大丈夫ですね。」
「もう少し増やせないかね?」
「それは窓口の人と話してください。詳しい数は把握してませんから。あと、脅したらそこで話は終わりです。担当者によく伝えておいてください。」
「わ、わかった。担当者にしっかりと伝えておくよ。」
「ええ、それで話は終わりですか?」
「そうだね、あと何かあればここに連絡してほしい、必ず私が対処するから、くれぐれも短慮は止めてもらえないだろうか?」
総理は連絡先を渡してきた。
「善処します。」
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