第170話 リョウ、バラから逃げる。

「・・・勘弁してください。」

「なんでですか!アニキ!」

「もう呼んでるし、お願いアニキと呼ばないで。」

「しかし、俺はアニキに全てを捧げたいんです!」

俺は背筋に悪寒が走った。

「・・・カエデ、助けて。」

「リョウさま、わかりましたか。誰でも助けているとこうなるのですよ。」

「よくわかったから!お願い!」

「仕方ありませんね。そこの人、リョウさまは今体調が悪いのです、治療に向かう邪魔をしないでください。」

「アニキ!どこが悪いんですか!」

「海水がケガについて痛いから洗い流しに向かっているんだ、ちょっとどいてくれるかな?」

「わかりました!お手伝いします!」

「へっ?」

「見る限り女性ばかりで洗い流すには不便でしょう、ここは同性の俺が洗い流して差し上げます。」

リョウは一歩下がり距離をとる。

「・・・いや、ミズホは家族だからね、気兼ねなんてないから、それにカエデもそういう関係だし、別に見られてもいい相手だから!」

「それでもです。ご一緒します!」

コウイチの真剣な目を見て更に一歩下がる。

「ミズホ、友達なんだろ、なんとかしてよぉ~なんかこわいよ。」

「友達じゃないのですが・・・でも、リョウ兄が怯えるのってなんか新鮮だね。」

「そんなこと言ってる場合じゃないよ、助けてよ。」

「さあ、向かいましょう。こちらに!」

コウイチは俺の腰に手を回しを移動を促した。

「にゃーーー!メーデーメーデー、緊急事態発生、誰か!だれかーヘルプーー!」

「カエデさん、リョウ兄パニック起こしてる。」

「珍しいですね、でも、助けないと。そこの人リョウさまを離してください、これ以上は敵として排除さしてもらいます。」

「敵だなんて、俺はただアニキを早く洗ってあげたくて・・・」

カエデが間に入って引き離してくれた。

引き離した時、リョウは震えていた。

「リョウさまが嫌がってるのがわからないのですか!」

「そんな!アニキはきっと喜んでくれますよ。」

リョウはブツブツ呟いていた。

「・・・イヤだ、バラはイヤなんだ!ポチ、どうしたらいい?ここは危険?それならば!」

俺は海に向かってダイブする。

「アイ、キャン、フライ!」

船から離脱する!

「また誰か落ちたぞ!」

辺りは騒然となる。

みんなが海を見るなか、

今度はシャチが俺を拾ってくれる。

「頼む、岸に向かってくれ!」

シャチに乗り、陸を目指した。

「あの人は一体?」

船に乗り合わせた人は夢を見ているような気分だった。


「リョウ兄、大丈夫かな?」

「急ぎ岸に向かわないと!」

「ポチの名前を呟いていたし、心配だよ。」

「船に任せないといけないのがもどかしいですね。」

残された二人はリョウを心配していた。


一方その頃岸についたリョウをアントくんとラルフが迎えてくれた。

「ありがと、アントくん背中を借りるね。叔父さんの家に向かって。ラルフは周囲を警戒してね。」

俺は急ぎ家に帰る!

バラの世界から逃げる為に!

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