第167話 船上

「おーふーねー♪」

「ふふ、リョウ兄子供みたい。」

「だって、こんなに凄い船だよ、テンションあがるよね。」

「ホントに凄い豪華な船だよね、ちょっと落ち着かないかも。」

「ミズホも乗ったことないの?」

「ないよ、そんな機会もないしね。」

「意外だね、こんな船が近くにあっていつでも乗れるのに?」

「うーん、地元すぎて観光に来ないし、この船デートぐらいでしか来ないよ。」

「ミズホはデートしたりしないの?」

「したことないよ!男の人と二人きりなんてリョウ兄以外となったりしないから!」

「おいおい、そんなこと言ってると彼氏も出来ないぞ。」

「いいもん、彼氏なんていらないし。」

「そんなんじゃ、結婚なんて夢のまた夢だな。」

「行き遅れたらリョウ兄貰ってね♪」

「行き遅れる前提で話すなよ。」

「そうですよ、リョウさまは既に予約で一杯なのです。他を当たってください。」

「カエデさん、私の予約は先に入ってますよ。他の方が後からなのでは?」

「早い者勝ちでもないでしょう?」

「それなら私が貰っていっても構わないよね?」

「取れるものならですけどね。」

「ちょい二人とももめないで。」

「ごめんねリョウ兄、でも、大丈夫だよ。もめたりしないからね。」

「そうです、お互い確認していただけです。」

「そう、それならいいんだけど、それより、船を見て回ろうよ。」

はしゃぐ俺に二人はついて来てくれる。

すると船は出港し、湾内を走る。

「おおー!動き出したよ。」

「リョウ兄、楽しそうでよかったよ。」

「うん、風が気持ちいいね。」

「リョウさま、お楽しみのとこ申し訳ありませんがあまり海風に当たられるとお身体に悪いかと。船内に戻りませんか。」

「うーーー、しかたないか。船内を楽しもう♪」


そして、景色を眺めながらランチを食べていると子供が三人手摺から身を乗り出しているのが見えた。

「あれ、危ないよな~親は止めないのか?」

俺が席を立ち止めようと動いた時、子供の一人が何を考えたのか手摺の上に立ち写真をとりだした。

「ちょっと止めてくる。」

俺は外に行こうとしたがその前に・・・


「ガキがこんな所で遊ぶな!遊ぶなら他のことをしろ!」

大学生ぐらいの男が怒鳴る声がした。

「えっ!あ、ちょと、うわっ!」

声に驚いたのか手摺に立っていた子供が海に落ちた。

「子供が海に落ちたぞ!」

「おい、だれか船員を呼んでこい!」

「船を止めろ!」

辺りは騒然となった。

声をかけた男は落ちると思っていなかったみたいで・・・


「お、おれは悪くないよな、あんな所で遊んでいたガキが悪いんだ・・・なあ、そうだろ?ヨシト。」

コウイチは混乱していた。

「コウイチ!こんな時に何を言ってる、誰が悪いかなんて後だ!子供を助けないと!」

「だ、だってな、俺が子供をころしたのか・・・」

「まだ、死んでないだろ!早く助けないと!コウイチしっかりしろよ!」

「ここから、落ちたんだぞ!助かるわけがない・・・」

「お前しっかりしろよ!正気になれ!」

ヨシトは混乱しているコウイチを置いて、必死で子供の居場所を探す。

「あれか?」

海面にバタつく姿の子供が見えた。

ヨシトは海に飛び込もうとしたが、先に飛び込んだ奴がいた。

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