第168話 海にダイブ

海に飛び込む前

「カエデ、子供の姿は見えるか?」

「今、確認してます・・・あれです。」

カエデが指差す。

「わかった!カエデは引き上げる準備を頼む。」

俺はそのまま、海に飛び込んだ。

「リョウさま!」

「リョウ兄!」

海に飛び込んだ俺は子供の所まで泳ぎ後ろから抱き抱えて泳ぐ、

すると子供は無理やり振り返り、俺にしがみつく、

「おい、しがみつくな。落ち着け!」

俺は子供を落ち着かせようと声をかけるがパニックになってる子供は聞き入れない。

「こりゃ俺も溺れるなぁ~」

俺はしがみつかれて泳げなくなったが、楽観的だった。

近くのドルフィンセンターから抜け出したイルカが蒙スピードで駆けつけてくれているのが見えていた。


「キュイ♪」

俺と少年はイルカに乗り、溺れるのをやめた。

「ありがと、おい、ボクちゃんよ、手摺で遊んで死にたいのか?」

「あ、あ、こわかったよ・・・死にたくなんてないよ。」

少年は泣きじゃくり抱きついてくる。

「なら、あんなことはもうするなよ。今回は助かったが次に助かる保証はないからな。」

少年の頭を撫でイルカに船に向かってもらう。

「カエデ、ロープある?」

「今投げます!」

カエデはワッカのついたロープを投げてくれた。

俺は少年をワッカに通し。

「カエデ引き上げてくれ。落とすなよ~」

「はい!」

カエデはロープを引き上げる、船員達も引き上げに協力してすぐに少年は船上に着く。

上から泣き声が聞こえてきたのでもう大丈夫だろうと確信した。

「リョウさま、今ロープを投げますから!」

「いや、いらない。すぐに上にあがるよ。」

「リョウさま?」

俺を乗せていたイルカが離れ勢いをつける。

そして、俺を押し上げジャンプする。

そして、目の前の高さまできた手摺を掴み、中に入る。

「ほら、ロープいらないだろ。ありがとー、今日は助かったよ。またねぇ~」

俺はイルカに手を振り、別れをつげる。

「キュー!」

イルカはジャンプで答えてくれ。帰っていった。


「リョウ兄、さっきのイルカはなに?」

「友達。」

「いつからよ!」

「さっき~助けてくれたし。仲良しだよ。」

「・・・カエデさん、私が変なのかな?」

「いえ、リョウさまが変だと思います。普通はイルカが、助けてくれませんから。」

「そうかなぁ?みんな助けてくれるものだよ。」

「リョウさまだけです。」

「リョウ兄だけだよ。」


三人で話していると助けた少年を連れて両親と思われる二人がやって来た。

「この度は息子を助けていただき、なんとお礼を言ったら良いか、ホントにありがとうございます。」

「お礼はいいですから、今後はちゃんと息子さんを見てあげてください。息子さんにも言いましたが次に助かる保証はないんですから。」

「はい、息子にもよく言って聞かせますが、私達も肝に銘じておきます。」

「それなら、もういいですよ。」

「でも、お礼をさせてください!」

「では、須磨のドルフィンセンターのイルカくんに差し入れしてあげてください。あそこのイルカが来てくれましたから。」

「あなたはそこの関係者なのですか?」

「いいえ?行ったこともないですけど。」

「なら、なぜイルカが来てくれたのですか?」

「そこにイルカがいるから?」

「あーすいません、リョウ兄は少し変わっているので、ちょっと特殊な事が出来るんです。だから、感謝はイルカさんにしてあげてください。」

「わ、わかりました。でも、せめてお名前ぐらいはよろしいですか。」

「あー桐谷リョウです。」

「私は黒田リキと申します此方は妻のハル、助けていただいた息子はクニと言います。姫路で薬の卸売りをしているので何かあれば訪ねてください。全力でお応えいたします。」

「そんなに大袈裟に考えなくていいですよ。たまたま、乗り合わせただけです。」

「いえ、感謝はさしてください。あなたは命の恩人ですから。」

「わかりました。何かあれば頼らせてもらいますね。」

俺はリキさんと握手をしてわかれた。


「カエデ、どっかに真水ないかな?」

「リョウさま、どうなされました。」

「傷口がね・・・しみて、いたいの・・・」

「リョウさま!そう言うことは早く言ってください。船員さん、どこか洗い場はないですか!」

「こちらに!」

船員さんはシャワーが設置されている関係者用の部屋に案内してくれる事になった。

船員に案内されていると。


「ミズホさん!」

ミズホが呼び止められた。

ミズホが振り返るとそこにはコウイチがいた。

「なに?あれ、コウイチさんどうしたんですか?用事がないなら後にしてくれますか?」

「その男は誰なんだ!」

「私のイトコです。じゃあ、これで。」

「待ってくれ、その男は何者なんだい!」

「私が誰と一緒にいても関係ないですよね。私達は急いでいるので!」

「ミズホ、知り合いか?」

「リョウ兄、早く洗わないと!」

「あっ、そいつは、おい、お前な子供が手摺で遊んでる所で声かけるなよ。」

「あれはあんな事をしてる子供が悪いんだ!」

「まあ、そうだけどな。声のかけ方もあるだろ。次は気を付けろよ~」

てっきり責められると思っていたコウイチは呆然とする。

「アンタは責めないのか?」

「なんで?あれはあの子供が悪いだろ?まあ、落ちた後の対処は悪いがそこは仕方ないしな。」

「それでも、俺のせいで子供が・・・」

「気に病むなよ、結局生きるか死ぬかは本人次第だからな、お前は善意で声をかけたんだろ?やりかたは悪いが俺が責める事じゃないな。」

「えっ・・・」

「そもそも、目を離していた親が悪いし、あんな馬鹿な事をする子供も悪い。まあ、死んでも自業自得だが、お前も危ないと思って声をかけたんだろ?今の御時世放置して方が楽なのにあえて行動したんだ、責めることはないだろ。まあ、落ちた家族からは文句の一つも言われるだろうけどね。」

「・・・あなたの名前は?」

「俺か?桐谷リョウだ。」

「桐谷リョウ・・・アニキと呼ばしてもらっていいか?」

今までにない、身の危険を感じた瞬間だった。

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