第166話 ヒトミに見つかる。

「人違いです!」

「リョウ、まだ何も言ってないよ。」

「私は船に乗りたいだけの小市民です、どうかお見逃しを。」

「ダメ、私を置いて可愛い女の子と遊ぶなんて許すわけないでしょ!」

ヒトミか俺の手を握って離してくれない。

「あ、あのヒトミさん、リョウ兄が困ってるので離してくれませんか?」

「ねぇ、あなたはリョウのなに?」

「私はリョウ兄のイトコですよ。今日はリョウ兄の気晴らしに来てるんです。」

「気晴らし?ってリョウどうしたの?元気ない?」

「そりゃケガ人だし。」

「そうじゃないの!何かあったの?」

「そんなにわかりやすく元気ないかなぁ~」

「リョウの目に力がないの、ホントにどうしたの?」

「いや、ホントにたいした事じゃないから、ちょっと昔を思い出してブルーになってるだけだから。」

「ホントに?」

「うん、だから解放して。」

「心配だから、私もついて行く。」

「ヒトミは仕事だろ?ちゃんとしろよ。」

「だって!」

遠くでヒトミを呼ぶ声が聞こえてきた。

「ヒトミさーん、そろそろ撮影入りますよ。」

「ほら、行ってこいよ。俺達は船でランチを楽しんでくるから。」

「私が働いてるのに、それは腹が立つけどホントに大丈夫?」

「大丈夫です、事情をよく知ってる私がリョウ兄を支えますので。」

「事情を知るって何よ。」

「私も当事者ですから、リョウ兄を支えれるのは私ですよ。」

ヒトミはミズホをじっと見て、

「・・・今回はあなたに任せるわ、あなた名前は?」

「ミズホです。桐谷ミズホ。」

「覚えておくわ、リョウの事をお願い、こんなに力ないのは初めて見たわ。」

「わかりました。リョウ兄は私がちゃんと支えますね。」

「今回だけだからね!」

「リョウ兄の埋めれないキズは私しか埋めれませんし。」

スタッフがやってきて、ヒトミを連れて行く。

「ヒトミさん、早く来てください!もう始まりますよ。」

「ミズホさん、手をだしたら許さないからね!」

ヒトミはスタッフに連れられ撮影場所に向かっていった。


「はぁ、カエデ俺ってそんなに元気ない?」

「はい、一目でわかるぐらいには。」

「ホントに?もう随分昔なのにまだ尾を引いてるのか。」

「リョウ兄、強がりは駄目だよ。ポチはリョウ兄の一部だったんだから、回復出来ないのは無理ないよ。」

「ミズホ、あんまり甘やかさないでくれよ。つい流されそうになるけど、流石にもう吹っ切らないと、ポチに叱られる。」

「そうだけど・・・あー、せっかくダイブ元気が出てたのに。」

「まあまあ、ヒトミを責めるなよ。事情を知らなかったんだし。それより、船に行こ。」

三人で船に乗船した。

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