第163話 ポチとの思い出
ポチ、俺が産まれた時に一緒に飼いだした柴犬で俺の愛犬だ。
俺の物心ついた頃には俺の面倒をよく見てくれた。
二歳、初めてのお使い、歩くのがやっとの俺が買い物に苦労してるのを横で支えてくれ、最後は背中に乗って帰宅。
三歳、爺さんに修行だと山に捨てられ迷子の所を迎えに来てくれた。
四歳、ダイキとの喧嘩に負けて落ち込んでた所を慰めてくれた。
五歳、一緒にダイキを倒す。
六歳、初めてのサバイバル訓練の時、一緒に来てくれて三日間を乗り越える。
七歳、泳げない事が爺さんにバレ、海に放り込まれて溺れている所を助けてくれる。
八歳、女性を襲っている大人を発見、ポチと一緒に撃退する。
九歳、ウシとの力比べに負け、踏み潰されそうな所を俺の代わりにウシを倒してくれる。
十歳、俺に友達を紹介してくれる、この頃から何となく会話が出来るようになった。
俺の産まれた時からずっとポチと一緒だった。
俺をずっと守ってくれて、支えてくれていた。
十一歳・・・
俺は爺さんに恨みがある奴に追われていた。
追われるのは初めてではないので、山に誘い、姿を消したが・・・
「おい、アキラの後継者、どこにいるかわからないが見ているのだろ、これを見ろ!」
そこには当時五歳のミズホがいた。
「ミズホ・・・」
「お前が出て来ないなら、この娘を殺す。考え付く一番残酷な方法でだ!だが、お前が大人しく捕まるのならこの娘は解放してやろう。さあどうする!」
俺は考える、相手は拳銃を持っており、今の俺では倒せないだろう。出ていったら殺られる、それにミズホの解放もあやしいものだ。
・・・思案を巡らし
「ポチ頼む、手を貸してくれ。」
「ワン」
ポチはしかたないなぁ~って感じで受けてくれた。
「出て来ないのか!ならまずは指を切り落としてやる。」
「やめてよーーなんでこんなことするの。」
「うるさい!恨むならお前を見殺しにした爺と孫を恨むんだな」
追手がミズホの指を切ろうとした時、
「まて、今出ていく。」
俺は追手の前に姿を出した。
「やっと、出てきたか。さあこっちに来い。」
「その前にミズホを解放しろ!」
「お前が来るのが先だ」
俺は一歩ずつ近づく、そして、手が届く一歩手前でポチが追手の手に噛みつく。
「ぐわっ!」
「今だ!」
俺はミズホを取り返し、抱き抱えて山に隠れる、それに合わせポチも姿を消す予定だった・・・
俺とポチが姿を消した直後、追手が適当に撃った弾が俺の右足に当たる。
「ぐっ!」
俺は痛みに意識を失いそうになるが、それでもミズホを担ぎ、山にコッソリ作った拠点に逃げ込んだ。
「ヤバイ、出血が止まらん。」
俺は止血をするが、中々血が止まらなかった。
「ポチ、ダイキとジロウさんを呼んできてくれないか?」
俺は服の一部を破り、血で助けてと書くとポチの首輪に結びつけた。
ポチは俺が心配なのか、何度も振り返っていたが、意を決して山の中を駆け出した。
「ミズホ、必ず助かるからな、あと少し辛抱して待っててくれよ。」
俺は不安で泣きそうになってるミズホを抱き締め、ポチが連れてくる援軍を待った。
ポチがダイキの所に着いたのはその日の夕方だった。
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