第164話 ポチ、リョウの為に

「なんだ、ポチ、リョウはどうした?」

この頃にはダイキは親友となっていた。

「ワン!」

ポチはダイキの腕の裾を引っ張り連れて行こうとする。

「なんだよ、ポチ、って血の匂い、ポチその首輪についてるのは!」

ダイキはリョウの服の一部を見つけ、中を見る。

『助けて、ジロウさんも連れてきて』

「これは、リョウがヤバイんだな!ちょっと待ってろ!オヤジー!」

ダイキはオヤジを連れてくる

「オヤジ、リョウがヤバイみたいなんだ助けてくれないか?」

「リョウがヤバイとはなぁ~、ん、血文字か?この感じだとダイブ出てるな、よし、案内しろ!」

「ポチ、リョウの所に行ってくれ!」

ポチは全力で駆け出す!

「おっ、速いな。ダイキ無理ならゆっくりついてこい、俺は先行する。」

ジロウはポチに並走してついて行く。

「速い!ポチがあんなに速いなんて知らなかった・・・」

ダイキは追い付くのを諦め、自分のペースでむかう事にした。


その頃、リョウは・・・

出血の為、意識がなくなりかけていた。

「リョウ兄ちゃん、死んじゃやだよ。」

「ミズホ、泣くなよ。お菓子でも食べてたら助けが来るからさ」

俺はポテチを渡す。

「ううん、こんなのいらない、リョウ兄ちゃんといる。」

「じゃあ、俺が食べたいから一緒に食べようか。袋を開けてくれるかな?」

ミズホはポテチの袋を開け、俺に食べさせようとする。

「ありがと、うん美味しいよ。ミズホも食べて。」

二人でわけあって食べていながら、今後を考える、

幸い拠点には水と食料が多少ある、このままバレなければ助けが来るまで粘れるが・・・

見つかったら最悪・・・


「こんな所にいましたか・・・」

ついに追手に見つかる。

俺はミズホを背中に隠し、

「おや、子供を追いかけるとは暇な人ですね。」

「それだけ、お前のジジイが憎いって事だよ。」

「それなら爺さんを殺ってくれませんか?」

「それが出来るなら殺ってるさ。」

「情けないですね、こんな子供しか相手に出来ないなんて。」

「残念ながらな、しかし、ジジイの嘆く姿を見るぐらいにはなるだろうさ!」

「へぇ、爺さんが嘆くかね?俺も見てみたいかな?」

「なら、天国で見てろや。」

俺に拳銃を突きつける、

「おや、子供相手に銃を使いますか?」

「その手にはのらんよ、接近戦は何があるかわからんからな、安全に仕留めさせてもらう。」

「臆病ですね。」

「そうだな、それじゃバイバイ!」

追手は銃を撃つ、それに合わせ俺は無事な左足を軸に踏込み間合いを詰める、腹に銃弾が当たるが無視をして拠点に隠して持っていた脇差で突きを放つ!

何とか相手の腹に刺さるが・・・浅かった。

「てめぇー!」

追手の蹴りを躱す力はなく、そのまま吹き飛ばされる、

「がはっ!」

腹を撃たれた事で血が口から吐き出された。

「くそったれ!てめぇ!」

追手は俺に銃を向けるが、俺にはもう動く力はなかった。

「リョウ兄ちゃん!」

ミズホは俺に覆い被さってくるが・・・

「み、みずほ・・・は・なれ・・てろ、あ・とす・こし・す・れば・・・」

「いや、リョウ兄ちゃんと一緒にいる!」

「み・ず・ほ・・」

何とかしたいが何ともできなかった。

「美しいねぇ~なら二人とも死にな!」

銃弾が俺達を襲う。

「ギャン!」

俺達に弾は当たらなかったが・・・

ポチが身を挺して、銃弾を受けてくれた。

「ぽ・ち・・・」

ポチは最後の力で俺の傍に来て顔をなめてくれた。その表情は穏やかで、最期まで俺の心配をしているという感じだった。

俺はポチの頭に手を置き撫でるがすでに互いに力はなく、そのまま寄り添うだけになった。


「なんだ、この犬は!」

追手は銃を再び放つが・・・

弾はジロウに受け止められた。

「リョウ無事か、ってヤバイなすぐに病院に連れていく!」

「な、なんだてめぇは!」

追手は銃を向けるが・・・

「じゃまだ!」

ジロウの拳で頭が吹き飛んだ。


「リョウ意識はあるか!そのまま意識を保て!」

「ジ・ロウ・さ・ん、ポ・チ・を・・・」

「ちゃんと病院に連れていくからな、安心しろ!」

「嬢ちゃんも血で汚れて悪いが一緒に抱えさしてもらうぞ。」

「それより、早く病院に連れていってリョウ兄ちゃんが死んじゃうよ」

ミズホは泣きながらジロウに掴まる。

「急ぐが落ちるなよ!」

ジロウは全速力で駆けた、人間とは思えない速さであった。

その結果、リョウの命は助かったが・・・


ポチはリョウに頭を撫でられたのを最後に亡くなっていた。

最後までリョウを思い、リョウの為に命を燃やし尽くした。愛犬ポチ


後日、意識が回復して、その死を知ったリョウは三日間泣き尽くした。






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